第128話:超絶完璧美少女ミナトちゃん。
「ひっ、ひひっ、お前はもう俺の罠にハマってんのさぁ! ハメられる為に罠にハマるのさぁっ!」
「お前さぁ……マジでキモいんだけど。友達居ないだろ?」
ジキルの様子がおかしくなっていくにつれ、確かに不穏な空気を感じるようになった。
目を凝らしてジキルを観察してみると、それはもうどす黒いオーラが全身を包み込んでいた。
これは叩きなおしても改善するタイプじゃねぇな。
『ミナト君、気付いてる?』
あぁ、大丈夫だよ。
「ここか?」
奴の全身を包む黒いオーラはその身体を伝って地面に、そして俺の足元へと伸びていた。
ので、それが俺に触れる前にその空間を断裂させる。
「あれっ、あれっ、あれっ? おかしい。なんでだぁっ?」
「お前が何かしようとしてたのは分ってたからな。ちなみに今のくらってたらどうなってたんだ?」
「……地面がスライムのようにお前の身体に絡みついて穴と言う穴から侵入し内臓をぐちゃぐちゃに……」
「お前さぁ……律儀に教えてくれるのはありがたいがやる事が陰険すぎ。もう少しストレートにぶつかって来れない訳? 例えばこんな感じでさ」
俺はぴょんと地面を蹴りジキルの目の前まで行って腕を竜化させ、振るう。
ジャギジャギジャギジャギ!!
耳障りな音をあげて部屋を囲っていた断層が切り裂かれていく。
ジキルは紙一重でかわしたようだ。
『こらミナト君、せっかくここを隔離したのにそれを自分で切り裂いてどうするの?』
あぁ、すまん加減がきかなくってな。
「はぁ……はぁ……危ない、危ない、こんなヒリついた戦いは、久し、ぶりだ……」
よく見るとジキルの足が、足首あたりまで地面に埋まっている。
先程はその地面ごとスライドする形で攻撃をかわしたらしい。
「お前地面を操れるのか?」
「……なんでも、という訳じゃあない。聞いてどうなる物でも無いだろうから教えておいてやる。俺は砂鉄を操る事が出来てな……そしてこの家は全て俺が自由に出来るよう改造してある」
なるほど……磁力使いって所か。
特別な素材で作られた家ならその全てを自分の手足のように動かせる……。
「だったらこの空間だけ隔離したのは正解だな」
「いや、逆にお前に逃げ場がないという事だ……ここに有る物全てが俺の意思通りに動くのだからな!」
地面が変質し、ぶっとい棘のようになって俺に襲い掛かる。
が、竜化させた腕を一振るいするだけでそれらは砕け散った。
強度は無し、と。
「きゃーっ! 今の見ました!? 本物ですわ本物ですわーっ!」
何やら外でぽんぽこが騒いでるな……この腕を見てイルヴァリースの力だと確信したのだろう。
「貴様、その腕は……なんだ? とても人の物とは……」
「説明するのがめんどい。教えてもお前はこれから死ぬしな」
「こ、殺しちゃダメですわ!」
「ミナトちゃん、加減してっ!」
「ミナト殿、殺せーっ!」
殺すなコールの中に一人だけ物騒なのが混じってたな……。
正直俺もアリアと同意見でこんな奴ぶっ殺してやりたい所だが、確かに聞きたい事もあるし適度に加減してボコる方がいいか。
「クソがっ、俺を、舐めやがって! 本当に殺す!」
奴から部屋中に黒いオーラが広がり、壁中から棘が飛び出した。
逃げ場はない。避けようもない。
だけど……。
「な、なんでだ……なんで当たらないぃぃ?」
「引力と斥力って知ってるか?」
「な、何を……」
「お前は砂鉄を固めて動かしてるだけだろ?
元がちっちゃな粒子なんだから簡単な斥力魔法で俺に向かって来なくする事くらい簡単なんだよ」
巨大な塊でもぶつけられたら斥力魔法で跳ね除けるのは難しいかもしれないけど。砂鉄が元な時点でこいつは詰んでる。
「だからさ、相手の事を把握する前にお前が自分の力を教えたのは完全に負けフラグだったって事だ。例えばこんな事も出来るぞ?」
俺は伸びた棘の一部をへし折り、それをジキルのちょっと横あたりへ向け、電気で加速させて弾き出す。
レールガン再びって奴だ。
「ぎゃあぁぁぁぁっ!!」
慌ててジキルはかわしたようだけれど、弾丸自体にも電撃をかなり纏わせたので結局部屋全体が電気を通して奴にもダメージが通る。
「こ、こうなったら……! 直接切り刻んでやる!!」
始めからそうしろよ馬鹿が。
ジキルはストレージから英傑の武器を取り出し、飛び掛かってきた。
それは金色に輝く大きなハサミ。
「武器まで趣味が悪いぜお前」
俺は敢えてそのハサミに腕を挟ませてやった。勿論竜化してる方を。
ガギギギギッ!
「ば、馬鹿なっ! この双剣に切れぬ物など……!」
「それ双剣なの? ハサミじゃなくて?」
「ば、化け物めっ! 貴様は、貴様は何なんだぁぁぁぁっ!!」
「覚えときな」
ミナト・アオイだ。
そう続けようとした時、身体から力が抜ける。
あれっ?
「私は超絶完璧美少女のミナトちゃんよっ!」
そう言って俺の身体は勝手に動き、ジキルの双剣とやらを粉々に打ち砕いて、その顔面へと拳を……寸止めした。
拳圧だけでジキルは顔面の皮がべろんとめくれ上がり毛髪は全て消し飛んだ。
「どやっ♪」
おい、ママドラ……なんで突然出てきた?
「だってつまらない名乗りをあげそうになってたから私が代わりに素敵なのを言ってあげたのよ♪」
「超絶……完璧、美少女……ミナトちゃ……ん、惚れた、ぜ」
ばたんっ!
ジキルは不穏な発言を残してその場に崩れ落ちた。
「じゃっ、あと宜しく♪」
あと宜しくじゃ「ねえだろうがおい! ……無責任に帰りやがって……」
どうすんだよこれ。
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