第8話:隠してたエロ本を見つけたかーちゃん。
『実際思ったより早かったわね。体内で私と自分とのバランスを取るって、感覚的には難しいと思うけど』
お褒めに与り光栄だね。ぶっちゃけ何か特別な事をした覚えはないんだが……ただ身体が馴染んだだけなんじゃないか?
『ふむ、だとしたら私達体の相性が良かったんでしょうね♪』
おい、言い方に気を付けろマジで。
とにかく、俺は元の外見を取り戻したし、満を持してママドラの巣を抜け出す事にした。
「イリス、俺が居なくてもいい子にしていられるか?」
「まぱまぱおでかけー?」
イリスは俺の足にしがみついてちょっと寂しそうに見上げてくる。
「ん……ちょっとな。いつ帰ってこれるかはちょっと分からないけど」
そもそも帰ってこれるのかも分からないけれど。
『君は何を言ってるのかしら……? イリスを一人で留守番させるなんて聞いてないわよ』
いや、だって……まさか連れて行けと?
『当然じゃないの。置いていく方がどうかしてるわ』
「俺は復讐しに行くんだぞ!? こんな子供を連れて行ける訳ないだろうが!」
思わず口に出てしまった。やはりもう少し脳内会話に慣れる必要があるな……。
「ふくしゅー? 誰かに何かされたの?」
イリスが心配そうに俺の服を引っ張る。
置いていかれる不安よりも俺の心配を優先してくれるあたりまさに天使と言わざるを得ない。
『イリスも私の娘、ドラゴンなのよ? 君の事情を知ったくらいで動じるようなお子様ではないわ。この子にミナトがやろうとしている事を話してちょうだい』
そんな事言ったってなぁ……。
ほんとに言ってもいいんだな?
『言ってみなさい。私の知ってるイリスなら全く問題ないわ』
こんな子供に復讐の話なんかしてもしょうがないだろうに……。
「あのな、俺は仲間だった奴に裏切られて崖から突き落とされちゃったんだよ。それでな、ここを出たらそいつらを追いかけて復讐しようと思ってるんだ。きっと俺は悪い事をする。だから、そんな所に一緒に来ちゃだめだよ」
俺の言葉を大人しく聞いていたイリスが、目をまんまるくして不思議そうに首を傾げた。
「その人達がまぱまぱに酷い事したの?」
「あ、あぁ……そうなんだ。だから俺は……」
「まぱまぱを酷い目に合わせた奴はあたしがぶっころっ!」
イリスが小さい身体でファイティングポーズをとり、「ふんふん!」と虚空へパンチを繰り出す。
……お前どういう教育してたんだよ。
『言ったでしょ? 私達はドラゴンなのよ? 逆らう者も気に入らない奴も容赦なく殺すわ。それが魔物だろうと、人間だろうとね♪』
俺はイヴァリースのママドラな部分ばかり見ていた為か誤解していた。
六竜だと分かっていたのに、人型をして子を想う姿を見て錯覚していたんだ。
ママドラもイリスも、人間とは違う世界、価値観で生きているという事を。
今更ながらにママドラと同化してしまっている事を恐ろしく思う。
『だからこんな綺麗なおねーさんとひとつになれた事を……』
それはもういいって。分かった、分かったよ。
「よし、じゃあイリス、一緒に行こうか。危険な目に合わないように俺が守ってやるからな」
『言っておくけど今の君はただの人間よ?』
待てよなんでそうなる? 六竜と同化して超絶無敵チートを手に入れたんじゃねぇのかよ。
『超絶……なんだって? とにかく自分でそういうふうに身体のバランスを整えたんでしょう? 私を隅に追いやって人間色を強くしたんだから当然じゃない』
……俺は前世の記憶をほぼすべてママドラに握られている。
そして俺はただの人間で……記憶を呼び出せないならただのレベル26冒険者だ。
『大丈夫だって。私がちゃんと困った時は必要な情報を引き出してあげるから。それに……本当に困った時には私に頼ってくれても構わないのよ?』
またあの状態になるって事か……。確かにママドラの力を使えば記憶をフル活用できるだろうけれど……。
まぁ。それについては後で考えればいいか。
「あたしもまぱまぱの事守るーっ♪」
ぴょんっとイリスが俺の腰のあたりまで飛びついてきたので、落ちないように持ち上げる。
「えへへー♪ まぱまぱ大好き♪」
マジでお前の娘どうなってんの? 天使すぎんか……?
『自慢の娘です♪ 父親はろくなもんじゃないけどね!』
うるせぇなぁ……。
『あ、いや君の事じゃなかったんだけど……まぁ、確かにどっちもろくなもんじゃないね』
俺じゃ無いって事は本当の父親の事か。
別に興味も無いしここに居ない事を考えるとあまり聞かない方がいいんだろうな。
『ありがと』
考えてる事が全部筒抜けっていうのめちゃくちゃやりにくいんだが……。
万が一にも良からぬ事を考えたら全部筒抜けじゃないか。俺だって男なんだぞ?
『ミナト……君はやはりイリスに歪んだ性欲を……』
ちげーよしつけぇな!
『元ロリペド犯罪者に言われても説得力がないのよね……』
俺はもっとこう、大人の色気があるタイプの女性がだな……。
『なるほど、私みたいなスーパー美女がお好みなのね♪』
ちげーよ、と心の中で念じつつも、イヴァリースのキラキラドレスから零れ落ちそうなあの豊満な胸を思い出してしまった。
『……』
頼む、黙らないでくれ。言っただろ俺だって男なんだってば。
『まぁ、健全な男子ならば当然の反応よね。そうね、仕方ないわ。だから気にする事ないわよ』
その息子の部屋でエロ本見つけたかーちゃんみたいな反応やめてくれ……マジで傷付くから。
「はいよーまぱまぱーっ! しゅっぱーつ♪」
俺の身体をよじ登って肩車状態になったイリスが俺の頭をぺちぺちと叩いてはよ行けと急かしてくる。
「しゅっぱーつしゅっぱーつ♪ ひどいにんげんはー♪ ぶっころーっ♪」
妙な歌を歌うんじゃありません!
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