解決

調理室にいる面々が驚いた目をしてこちらを見ている(さっきもこんな景色見たな・・・)


「ちょっ・・・・・・ケント・・・・待っ・・・・て・・・よ・・・。」

「ちょっとは・・・待ちなさいよ・・・・・ケント・・・・・!」

少し遅れてフラフラのアカネともっとフラフラのケントがやって来た。


「あぁ、悪い。」

「本当よ!まったく・・・・」

「今度…から、いきなり…走り出すの…は勘弁して…よ…ケント………。」

アカネは大丈夫そうだが、非運動系のトモハルはしゃべるのもやっとの状況だ。


「何だか知らないが、待つのは君の方じゃないかい?島原クン。」

「ご忠告、感謝します。後野副会長…以後、気を付けます。」

「そうしたまえ。」

後野副会長は上から目線で満足そうな顔をしている

「ですが…学校に爆弾を仕掛けようとするあなた方の言うことなど塵程の価値もないと思いますが。」

「ナニ?」


元々、気が短い後野副会長だ単純な挑発をしただけで余程腹が立ったのか、顔を赤らめて小刻みに震えている。

対照的に後ろにいる坂枝野会長達は顔を青くしている(小刻みに震えている点は同じだが・・)


「坂枝野会長。その手に持っている圧力鍋を貸して頂けませんか?」

そう言った瞬間。坂枝野会長の顔が青を通り越して白くなる。

俺がそばによると坂枝野生徒会長は圧力鍋を慌てて後ろにやる


「生徒会長、どうして圧力鍋を隠すんですか?」

「…………………………」

生徒会長が何か話そうとするが、池の鯉みたいに口をパクパクさせているだけだ。

変わりに話したのは後野副会長だ。


「何なんだい?いったい、私達はただ次やる調理実習で作る煮物の練習をしようとしていただけだよ?それとも何かい?この圧力鍋が爆弾だとでも言うのかい?悪いけど脳外科をおすすめするよ親の知り合いに名医がいるから、良かったら教えてあげるよ。」

動揺と怒りが混じった紫色の顔でとてもたくさんしゃべってくれた。


「いえ、私はどこも悪くありません。それは爆弾です。」

「ハァ?やっぱり脳外科にいった方が良いね。電話番号を教えてあげるよ。」

「昔、ある国のマラソン大会で爆発事件がありました。」

そういったとたん、後野副会長の動きが止まった。


「その爆発事件で多数の怪我人と複数の死者が出ました―――その事件で使われたのが圧力鍋でした。」

「分かった、圧力鍋が爆弾になるというのは認めよう・・・だが、普通の高校生に爆弾なんて大それたもの、作れる訳無いじゃないか。」


「いえ、意外と簡単に出来ますよそれに動画サイト等を見れば簡単に誰でも作り方を知れる世の中です――以前、ドローンに銃をつけて発砲する動画があげられ制作者が逮捕される事件がありましたがそれが良い例です・・・それに私は爆弾なんて一度も言っていませんよ?」

「……!!」

しまったという顔をした後野副会長はなんとか言い訳しようとするが坂枝野会長が

「もう限界です。」


そう言って俺達に圧力鍋を渡してくれた。

「ありがとうございます。トモハル、アカネ…解体してくれ。」

「了解」

そう言うと2人は黙々と解体作業を始めた。


「どうして、私達がまだ仕掛けて無いと思ったんですか?」

 坂枝野生徒会長が俺に尋ねる

「最初は私達も、防犯カメラの映像が途切れた時に仕掛けたと思いました。でもある人にヒントをもらって発想を変えました。無いんだったら、まだ仕掛けて無くてこれから仕掛けるのではと。」

「お見事です。」

坂枝野生徒会長が小さな拍手をする


「1つ質問があるんですが。」

「何ですか?」

俺はずっと気になっていることを坂枝野生徒会長に聞く

「確か、坂枝野生徒会長と後野副会長は仲が悪かったはずです―――それが何故協力しているのかが気になりまして。」



そう聞くと、坂枝野会長は顔を赤らめて口を開いた。

「実は、私達最近お付き合いを始めたんです。」

「オツキアイ??」

俺は驚きのあまり変な声を出してしまった

「本当に付き合ってるんですか?後野副会長と・・・?」

「ハイ・・・・・」

そう言うと坂枝野会長はさらに顔を赤らめて俯いてしまった。

「………」

開いた口が塞がらない


「でも、父は私達の交際を認めてくれませんでした―――私にとって父は目の上のたんこぶでした…そこで、認めて貰えないなら父を失脚させて2人で学校の寮に住もうと、そう決心しました。」

坂枝野会長って案外恋愛に情熱的になる人なんだな・・・


「それで今回の爆弾騒ぎを起こそうとしたと、少しやり過ぎなような気がするんですが・・・・(少しではなくかなりだが……)」


「勿論、安全には配慮してます。」

本当だろうか・・・・


「ケント、終わったよ。」

爆弾の解体が終ったケントが俺に話しかける

「そうか、ありがとう…ん?何だ?これは。」

俺は黒い物体を手に取る

「あっ、それ私が作った新型火薬。」

そう言ったのは科学部部長の佐野米部長だ。


「火薬!?」

俺は思わず火薬を放り投げる

「俺、そんなのいれた覚えないぞ?!」

そう言うのは技術部部長の慌てた様子の大隈部長だ。

「じゃあ、いったい誰が・・・?」

その場にいる全員がパニックになっていると、


「お?学会と生徒会が一緒なんて珍しいな。」

そう言って生活指導の先生がやって来た俺たちは慌てて爆弾を隠す


「先生、どうされたんですか。」

「あぁ、ちょうどお前達を探してたんだ。」

先生はポケットの中を漁ると鍵を取り出すと

「これマスターキーのペア、職員室に落ちててな。誰も借りに行ってないって言うんでお前達に返そうとな。」


「え?俺は確かに銀節先生に渡しましたよ?」

「銀節?そんな奴いたか?」

先生は不思議そうな顔で言う

「いますよ。教育実習で隣町から来てる気の抜けるような喋り方の。」

そう言うと先生は頭を掻いて、思い出したのか大きな声で、

「あぁ、いるなそんな奴。でもそいつの名前は確か竹田たけだ 純一郎じゅんいちろうって名前だけどなぁ」


「会長、どちらの名前を知っていますか?」

俺は坂枝野生徒会長に尋ねる

「銀節先生です」

「銀節先生に何か渡したり、銀節先生と何か話したりしましたか?」

「はい。銀節先生は今回の計画を持ちかけてきた方で、色々と資料等を下さって本当にお世話になりました。」


「爆弾の設計図の隠し場所は銀節先生は知ってますか?」

「はい。生徒会室の金庫に部費等と一緒に保管してます。」

やられた……俺はトモハルとアカネに急いで学会室に向かうように指示を出し、生徒会室に走った。


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