第44話 呪いですね
馬車の旅もあっという間に終わり一行はアルティアーク公爵家に到着する。
流石は公爵家の家ともなると立派なお屋敷だ。
レイナは自分が住んでいた家と比較してそんな事を思う。
ここにクリスティーナと今回の主要人物であるシールズが住んでいる。
シールズはここ最近、病状が重く家から出られない状態だ。
レイナも少しでも力になれればと思いやって来た。
「本日はお忙しい所、息子シールズの為にお越しいただきありがとうございます殿下！」
この家の主であるアルティアーク公爵がイーサンに礼を尽くす。
「いや、私まで同行してしまい申し訳ない。こちらがレイナだ」
「いえ、レイナ様もお越しいただきありがとうございます」
「お力になれるか分かりませんが、誠心誠意やらせていただきます」
「そう言っていただけるだけでありがたいです」
公爵家ともなれば良い医師を探す事など造作も無い事だろう。
それでもシールズの病状は改善されなかった。
だとしたら少しでも可能性があるなら、医師でもなく年端も行かない女性だろうが縋りたい気持ちはレイナにだって分かる。
何とかしなければとレイナは身が引き締まる思いだ。
「レイナさん本日はよろしくお願いいたします」
「はい。よろしくお願いします」
クリスティーナも挨拶に赴く。
「では早速ですがシールズの元にご案内いたしますわ」
レイナ達一行はシールズの元に向かう。
部屋の中でベッドに寝ていた人物は体を何とか起こして一行を迎える。
「本日はわたくしの為に有難うございます殿下、レイナさん」
「そのままで構わないよ、楽にしてくれ。レイナ診てみてくれないか？」
イーサンはレイナに告げる。
「はい。シールズ様失礼します」
レイナは一番上の兄から奪った【鑑定】をシールズに掛ける。
レイナは奪ったのか複写をしたの分かっていなかったが正解は強奪だった。
奪われた兄は今【鑑定】の能力を使えなくなっている。
複写能力だと思って誰彼構わずに【拒絶と吸収】の能力を使用しなかったレイナの判断は正しかったと言える。
そんな事をしていたら被害が大きくなりレイナが疑われていただろう。
危険人物として監禁、処刑されていたのかもしれない。
そんな兄から奪った【鑑定】能力は勿論、元の兄の能力とは違う。
【拒絶と吸収】で得たものは向上する、これは野菜を育てる際にも発揮された事で分かるだろう。
つまり【鑑定】能力も通常では分からない事も分かる様になっている。
シールズを【鑑定】した結果は以下の通りだ。
シールズ・アルティアーク １４歳
毒状態と偽装（絶命の呪い状態）
症状：全身の痺れから始まりそれが痛みに代わり最後には激痛で命を落とす。
考えていたよりも症状は悪く根深いとレイナは思う。
毒状態と偽装というところに、呪いを掛けた術者の悪意を感じレイナは寒気すら覚える。
しかも普通の【鑑定】では見えないという事なのだろう。
分かっていれば周りの人間は初めから病気では無く呪いと言っていたはず。
毒状態としか【鑑定】されなかったのは間違いない。
おそらくそれにより解毒や回復魔法が使われたのだろう。
しかし呪いであった為に効果は無かった。
だからシールズは治らなかったとレイナは正解に辿り着く。
レイナは毒に関しては自分の体内から取り出した実績がある。
しかしながら呪いは初めての事でありレイナとしても不安があるのは否めない。
そんな想いが表情に出たのかクリスティーナは言う。
「レイナさんどうでしょう。弟は良くなるのでしょうか？」
呪いを解く事は出来るか分からないが、現状を伝える必要があるだろうとレイナは口を開く。
「弟さん、シールズ様は呪いを掛けられています」
「「「！？」」」
この場にいた全員が驚く。
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