第43話 嫉妬ですね
レイナはイーサン達とクリスティーナの弟であるシールズを治療する為に公爵家に向かう。
イーサンが同行すると言う事が今回の依頼の重要さを物語っている。
例の魔導具付きである馬車での旅路なので快適だ。
まあ、王宮から街に行くだけなので旅と言うには大袈裟だが、快適であると言うのは気分がいいとレイナは乗り心地に満足している。
ただ座席には疑問を持っている様だ。
レイナの反対側の座席には護衛であるラウルが座っている。
レイナの隣にはイーサンが座りピタリと肩を寄せた状態だ。
結構広いのだからゆったりと座ればいいのにとレイナは思うのだが邪険にも出来ないのでそのままレイナは座っている。
まあレイナとしてもイケメンキラキラ王子が隣に座っている事に文句はないし、寧ろ光栄であると思ってしまっている。
体温が感じられる程、体を寄せられて座られたら勘違いしてしまう女性もいるのではとレイナは思ってしまうが、雇われの身としては恐れ多くて恐縮してしまい上手く言葉が出てこない。
「あ、あのイーサン？」
「どうしたレイナ？」
「ちょっと席が近いんじゃない？」
「ん？そうか？ 馬車は狭いからな、仕方がない」
王族専用の馬車なのだからスペース的には余裕はある。
それはイーサンにも分かっているはずであり、無理して窮屈に座る必要もない。
レイナは仕方がなく端に寄るのだがイーサンがその都度体を寄せてくるので、レイナは壁とイーサンに挟まれている状態だ。
イーサンの反対側は一人が座れるスペースが出来ている。
それを見たラウルは呆れた声でイーサンに言う。
「イーサン様、少しレイナに寄り過ぎではありませんか？」
「ん？ そうか？ 揺れるからな。これぐらいが丁度いいだろ」
ラウルの発言などイーサンにはどこ吹く風だ。
王族専用の馬車の足元は魔導具が装備されているので振動は吸収されており揺れる事は殆どない。
そんな事はイーサンなら分かっている事だとラウルは考えるも、嬉しそうなイーサンの表情にラウルは諦め、心の中でレイナに詫びる。
レイナはもじもじと顔を赤くして俯く事しか出来ない。
恥ずかしさを誤魔化す為に話題を振ろうとするも、横を向けばイーサンの顔が近くてレイナは戸惑ってしまう。
それを見かねたのかラウルが助け船を出す。
「レイナは想い人はいなかったのですか？」
「えっ！？」
突然のラウルの話にレイナは驚く。
レイナはラウルが気を使って話しかけてくれているのが分かるのだが、如何せん内容が悪い。
もう少し他の話は無かったのかとレイナは思う。
イーサンも興味があるのか、レイナは隣からの視線をひしひしと感じる。
幼少時代でも憧れる男性の一人や二人女性ならいるだろうが、迫害されていたリーネには恋愛経験が乏しい。
更に強制的な婚約と破棄で恋愛などしている余裕がなかったというのもある。
『神木れいな』としてはどうだったのかとは思うが本人は黙秘権を行使。
だからなのかラウルの話題に素直に答えるのもどうかと思ったのかレイナは少し大人びた回答をする。
「あら、ラウル様。女性にその様な事をお聞きになるなんて野暮なお方ですわ」
「おっと、これは失礼いたしました！？ レイナお嬢様」
何だかお芝居みたいだとレイナは自分の発言に滑稽さを感じるも魅惑的であろう女性を演じてみた。
ラウルも察して合わせてくれる事にレイナは思わず笑みがこぼれる。
「ん？ いつからお前達はそんなに仲が良くなったんだ？」
イーサンはレイナとラウルをジトっとした目で見る。
これって嫉妬なのかしらとレイナは思う。
まあ恋愛感情と言うよりは、新人が自分を差し置いて先に部下にちょっかいを出したのが面白くない、みたいな感情だろうとレイナは推測する。
実際のところイーサンにはレイナに関して恋愛感情がある。
それは護衛のラウルも感じている通り、イーサンの普段の行動から見ても明らかだ。
周りの人間の多くはそれが分かっていて温かい目で二人を見ている。
イーサンの気持ちが家族に対する親愛の情ではなく男女のものであると分かっていないのはレイナだけという事なのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます