第35話 専属契約ですね
「レイナ様がこの薬草を育てられたのですよね?」
「ええ、敷地内の畑を借りて作りました……」
ぐいぐいくる商人にレイナは圧倒される。
「ある物は是非譲っていただきたい。いえ、もし可能であれば定期的に取引させていただきたいと思っております」
「は、はあ」
薬草はインベントリにも入っているし畑にもある。
余程ピンク色の回復薬が作りたいのか商人は必死だ。
商機と考えているのか目の色が違う。
ここまで欲しいと言うならピンク色の回復薬には価値があるという事がレイナでも分かる。
将来、自分の店を出す場合には主力商品にしてもいいのかもしれない。
レイナは未来の商店のラインナップに乗せられそうだとわくわくする。
「あの、同じ薬草から出来た回復薬が違うという事は、作る人によって完成品も変わるという事でしょうか?」
「はい。うちで雇っている薬師は優秀なのですが、更に優秀な者が作製すれば結果は違うかと思われます」
「上質な薬草を使って優秀な人間が作ればより良い物が作れると?」
「おっしゃる通りでございます」
薬草も、もっと上質な物が作れれば、良い回復薬が出来る事をレイナは理解する。
改良して今までの物を越える薬草を目指すべきだろう。
せっかく作るのなら良い物を作りたいとレイナの気持ちは高まる。
「是非お譲りいただきたい。この出来上がった回復薬はレイナ様に差し上げます」
七色、金色、ピンク色の回復薬を一本ずつ渡される。
「貴重な回復薬をいただけるのですか?」
散々熱く語っていたのに貰ってしまっていいのだろうかとレイナは戸惑う。
「ええ、問題ありません。レイナ様とは末永くお付き合いさせていただきたいのです」
レイナに恩を売っておきたいという事なのだろう。
一本しか出来なかった七色の回復薬を渡すのだから、その真剣度は並ではない。
「分かりました。そこまでおっしゃるなら今ある薬草はお渡しします」
「話が早くて助かります。どれぐらいあるのでしょうか?」
自分でも実験してみたいので全部渡すわけにはいかない。
でも誠意を見せて貰っているので多めに渡したいとレイナは考える。
「でしたら300本でどうでしょうか?」
「300本ですか! あれからそれ程経ってはいませんよね? 一体どうやってそんな量を作られたのでしょう?」
「いえ、前に植えていたのが先日やっと収穫出来たのです」
本当は植えて次の日に出来てしまうので、あっという間に数が採れる。
でもこれは異常な事って言うのが分かるのでレイナは誤魔化した。
あまり混乱させるのも良くないだろうと言う判断だ。
「ありがとうございます。これだけあれば助かります! 前回の買い取り額から少し色を付けさせていただきます」
「えっ、こんなにいただいていいのですか?」
「はい。それだけこの薬草には価値があります。お受け取り下さい」
「あ、ありがとうございます」
「定期契約の方は一度お考えいただいて構いません。うちとしましてはレイナ様とは良い関係でお付き合いさせていただきたいと考えております」
レイナに深々と頭を下げる商人は腰が低い。
レイナは只の使用人なのだが王族に対するような扱いだ。
それだけこの薬草の力が凄いという事だろう。
「はい。前向きに考えさせていただきます」
回復薬も貰えたので後で色々と調べてみようとレイナは微笑む。
正直、薬草売るだけで生活出来てしまうかもしれない。
そんな甘い事をレイナはこの時考えていた。
自立出来る日も近いだろうと……。
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