第34話 回復薬って凄いんですね

 サムエルに相談すると本日、あの商人が来るとの事。

 薬草の事を確認してみるのに丁度いい。

 この前に来てから日が経っているので、もう結果は出ているはずだ。


 畑にも沢山の薬草が完成しているし、インベントリにも大量にストックされている。

 もし良い回復薬が出来るなら薬草を多めに渡してもいいとレイナは考えている。


「レイナ、だいぶ剣筋が良くなって来ましたね」

「ありがとうございます」


 まさかの剣術師匠からの褒め言葉。

 師匠から言わた一言に歓喜するレイナ。

 自信になるし少しは盗賊とも渡り合えるかもしれないとレイナは嬉しくなる。

 師匠には全く歯が立たないが、早く自分の身を守れるぐらいにはなりたい。

 レイナにとってそんな気持ちが訓練する事への力となる。



「ご無沙汰しております。サムエル様、レイナ様」


 久々に見た商人は晴れ晴れとした顔をしている。

 良い事でもあったのか終始笑顔だ。


「先日引き取らせていただいた薬草ですが、思った以上の成果でした!」


 そう言うと商人は鞄から瓶を取り出す。

 中には液体が入っている。これが回復薬なのだろう。

 ピンク、金色、そして七色の液体が封入されている瓶は輝いている。


「うわ、綺麗!」


 瓶の中身がキラキラと輝いて、その美しさに思わずレイナは声を上げる。


「こちらがレイナ様からいただいた薬草で作製した回復薬になります」

「本当に綺麗ですね。七色があるという事は最上級の物が出来たのですね!」

「はい。なんとか一本作製する事が出来ました!」


 以前来た時に最上級の回復薬は商人は見た事がないと言っていたから興奮気味だ。

 完成したのが嬉しいのだろう。


「調薬師も興奮しておりました。初めて最上級の回復薬を作れたと!」


 それから如何に七色の回復薬が凄いかを商人は熱く語りだした。

 長い時間、話しを続けたが、レイナは話の腰を折るのも悪いと思い相槌を打っておく。


「し、失礼いたしました。私ばかり話してしまって」


 少し落ち着いてきたのか商人は我に返る。

 ばつの悪そうな表情だ。

 でもレイナにも貴重な物が完成したというのは良く分かった。

 レイナは話題を変えて質問する。


「同じ薬草を使ったのに出来る物が変わるのですね」

「ええ、素材が同じでも作製する人間や条件によって完成品は変化してしまいます」


 作製に技術的なものがあるのだろう。

 作るのが難しいのかもしれないとレイナは推察する。


「金色は上級としてピンク色の回復薬なんてありましたっけ?」


 確か回復薬は緑、青、金色、七色と4種類があると聞いた。

 ピンク色は無かったはず。


「はい。我々も初めての事で驚きました。レイナ様から引き取らせていただいた薬草から作るとピンク色の回復薬が出来るようです」

「じゃあ、これも回復薬なんですね?」

「左様でございます。七色と金色以外は全てこちらの色の回復薬になりました」

「えっ、残り全部ですか!?」


 女性のレイナが薬草を作ったからピンクになるって事ではないだろう。

 この現象に何とも言えずレイナは困惑する。


「でも回復薬ってことでいいのですよね? どれぐらいの効果があるのですか?」

「金色の上級と同等の効果があると鑑定で出ております」

「それは素晴らしいですね!」


 今回引き取って貰った薬草は全て上級以上の効果がある回復薬になったって事だ。

 流石は森の恵みで育った物は違うとレイナは歓喜する。

 【拒絶と吸収】の能力は高性能という事が証明された。


「更にそれだけではありません」

「まだ何かあるのですか?」

「はい。魔力回復効果もあると鑑定されました」


「な、なんと二重効果の薬なんてありえない!」


 驚きの声を上げたのはサムエルだ。


「えっと、そんなに凄い事なのですか?」

「いいですかレイナ。回復薬とは体力回復の為の成分を薬草から抽出して効果を高めた物です。余計な効果を付加させようとすると回復効果が落ちてしまうのです」


 つまり回復薬は体力回復に特化した物だという事が言いたかったのだろう。


「だから、体力回復効果が上級であるにもかかわらず魔力回復効果があるというのは異常な事なのです」


 商人もその通りだと頷き口を開く。


「レイナ様、本来はありえない事なのです」


 そんな事を言われてもレイナには分からない。

 効果が両方あるなら良いのではと考えてしまう。


「はあ、不思議……ですね」


 レイナは何とも言えず、そう答えるしかなかった。

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