第36話 国の管理になるのですね

 王都に店を持つのって幾らぐらい掛かるのだろうか、メイドの仕事を終えて部屋に戻ってからレイナはそんな事を考える。

 

 国の中心である王都は人も多く店の賃料も高い。

 ある程度は仕方がないとしても余り高い家賃は払えないと言うのがレイナの本音だ。


 この世界にネット販売があれば簡単なのだが。


「そうもいかないよね……」


 商人に貰った回復薬を見ながらレイナは無い物ねだりをしてしまう。

 実はレイナはこれからは簡単に薬草を作れなくなってしまった。

 その事もあってか、こんな空想に逃げ込んでいる。


「それにしても綺麗ね」


 回復薬の輝きにレイナはうっとりする。

 七色、金色、ピンク、どれもそれぞれの良さがあって見ていて飽きない。 

 効果が違うらしいのでレイナは【鑑定】してみる。


 七色:最上級回復薬。部位欠損も修復が可能。

 金色:上級回復薬。あらゆる傷を治す。

 ピンク色:上級複合薬。上級回復薬と上級魔力回復薬の効果を併せ持つ。


 改めて見ると凄まじい物が出来上がったのがレイナでも分かる。

 前世だったら大変な事になっているはずであり、この世界でも大変な事になった。


 出来上がった回復薬を見たサムエルが急いでイーサンに報告した。

 そこから直ぐにイーサンは商人が作製した回復薬を全て引き取る事を決めた。

 更に今回渡した薬草も高値で買い戻す。


 そしてレイナと商人の定期契約の件も白紙に戻した。

 これ程強力な回復薬が簡単に作れてしまうのは問題であり、国が管理せざるを得ないとの事。

 商人もそれが分かっていたのか素直に応じた。

 だからこそレイナに貴重な七色の一本を渡したのだろう。


 王家に係わりあるレイナに回復薬を渡す事で周囲の反応を見たかったのかもしれない。

 でもイーサンの対応は余りにも早かった。

 儲ける算段があった商人は一瞬、残念そうな表情を見せる。

 これだけ凄まじい効果なら儲けも莫大だったのだろう。


 それでも渡したのは計算があったからだろう。

 目先の利益とこれからの利益を天秤に掛けたのかもしれない。


 でもこれで王家の信頼は勝ち取れたのは間違いないだろう。

 今までも御用達の商人だったが、更に地位を高めたと言っても過言ではない。

 レイナがイーサンの立場だったら優先して取引したい相手だと考えるのは当然の事。

 商人は損して得を取ったはずだ。


 そう言う事なのでレイナも簡単に薬草を作れなくなった。

 強力な回復薬を作れる薬草を片手間で作っていたら問題だろう。

 国で管理するので個人で作るのは禁止される事になった。

 

 将来の店の主力商品が無くなってしまったので、新たな商品をまた考えないといけない。

 余りにも強力過ぎたので効果の抑えた物を開発しなければならない。

 許容される範囲での製品でなければ市場には流せないからだ。


 今回の件で明日私の部屋に来る様にとレイナはイーサンに呼ばれている。

 そこら辺も含めて今後の事をイーサンに相談しようとレイナは思う。

 


 

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