第一章 初めて

期末テスト一週間前

俺らが通っている高校は千葉駅の近くにある、緑ヶ丘高校だ。

偏差値は70前後というだけあって、勉強大好き変人ばかり集まってくる。

その代わり悪い奴はいないと思うし、校則も緩い。いーだろ。


具体的には携帯の使用OKであったりバイト、髪染めOKであったり・・・。


「でさぁ、碧惟。髪染めてみたいんだよねぇ」

朝の駅のホームで出会うなりいきなりそう切り出してきた。


「どうしたいきなり」

「いやぁ、高校生だよ!?染めてみたいじゃん!」

「じゃあ染めれば?」

朝ということもあって、テンションが低い俺にこいつの高いテンションは正直言って毒だ。


「何色が似合うと思う?」

「黒とか?」

それじゃ今と同じじゃん!と抗議してくる美佐希。

美佐希は身長167cmと女子としては高身長で、艶やかな黒髪を持っている。顔もまぁまぁ可愛いし、何でも似合いそうだけどな。


「染めたところで何かあるのか?」

「あ…。・・・・・・・・・・・・・・・・・・ないわw」

「ないならやめとけ。その髪痛めるだけだぞ」

「ふぁーい。しょうがないからやめるわ。」


と、しょうもないやり取りをしていると、電車がホームに入ってくる。

電車では、千葉まで3駅、10分かからずについてしまう。

そのうえ乗っている人もうちの生徒と少しのサラリーマンだけなので確実に座れる。


そして大体こいつが俺の隣に座ってくる。知ってた。



「それよりも来週一学期末テストじゃん死んだ」

今日もこいつは俺の隣に座って何やら嘆いている。

「そんなに無理なら休日はゲームせずに勉強しろよ」

「それは若干、というかかなり面倒くさい」

「それな」


勉強しろ、とは言うが、実際自分も勉強が嫌いなので同意せざるを得ない。



そして電車は千葉駅に着き、改札を出て、目と鼻の先である学校に向かって歩き出す。


「今日帰ったら、また碧惟の家行くね」

「へいへい。てか毎日来てるんだから言わなくていい」

「はーい。またねー」

「おう」


昇降口でそんなやり取りをして、別れを告げてお互い別々の教室へ向かう。

俺は1年3組。美佐希は1年6組へ。

1年のうちはまだだけど、2年からは理系文系を分けたクラス編成になる。

ちなみに俺は理系志望だ。あいつは知らん。聞いたことがない。


鞄を下ろし席に座り、文庫本を取りだす。そして文字をなぞる。


予鈴が鳴ったので文庫本にしおりを挟みしまう。


HRでは期末テストのことと、終わったら修学旅行の班決めを行うと告げられた。


HRが終わり、一時間目が始まる手前で携帯が短く振動した。



08:43 LINE メッセージを受信しました。

美佐希「昼ご飯、僕と学食行かない?」


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