あの瞳が、あいつが、あの日が溢れている

影月ジス

プロローグ

プロローグ 休日の過ごし方

「A地点を占領しろ!美佐希みさき!」

「まかせろ!この僕にかかればそんなこと―」

「―そっちに敵軍行ってるって!銃構えろバカッ!」



俺の指示を聞いた美佐希が慌ててコントローラーを落とす。

コントローラーを拾う間に敵に見つかり、死んでしまった。



バナーを時間内に回収すれば復活することができるが、俺の方も敵と交戦している最中なので、残念ながらその暇はない。



そんな中、先に死んだ美佐希は「早く倒して回収しろ!早くしろばかっ!」と言いながら俺の肩を揺らしてくる。やめろエイムがぶれて死ぬ。



まあそんな状態で正確に狙いを定めることができず、徐々にハチの巣になっていくゲームの中の俺。あー死んじゃうよー。



それに気づいて美佐希が手を放すが、時すでに遅し。俺のHPも0!やったね!



じゃねえんだよ!せっかく100人中13人くらいまで登れてたのに。優勝ドン勝までもう少しだったのに。という意思を込めて美佐希を睨む。



「そこまで睨まなくたっていいじゃないかぁ碧惟あおいー。油断したのは謝るからさー」


そういいながら俺の頬をツンツンしてくる美佐希。

俺はその手を両手で掴み、雑巾を絞るようにねじり上げる。



「いだいぃぃぃ!ゆるじて碧惟ぃぃ!」

「しょうがないから離してやる。次から油断すんじゃねえぞ」



…はぁ。実をいうと油断して殺されるのはこれで17回目である。それも10試合で。

復活させても、そのことに気づかず殺されてたり、ガチガチ装備の相手にエンカウントして殺されたり…。学べよいい加減。




「っと。時間的に昼だけど、飯どうする?」

「んー。おなか減ったし僕が何か作ってあげる。なにがいい?」

だるそうに立ち上がり、うちのキッチンへ向かう美佐希の姿を見ながら俺は何でもいい。と答えた。



「じゃあラーメン作ったげる」

「おけ、それでよろしく」


美佐希が飯を作

り終わるまで手持ち無沙汰になった俺は、キッチンに向かった。

冷蔵庫から麦茶のポットを取り、コップに注いで一気に飲み干す。



「ゲームの後はこれに限るぜ!」

「はいはい邪魔だから出てってねー。」



何だよ決め台詞セリフ言ってたのによ。まあ置いといて、おなかが減っているし早く飯が食いたい。しょうがないし素直にキッチンから出てソファに腰を掛ける。




10分ほどして昼飯ができた。



「なんか、すげえ赤いな」

「でしょ?なんたって激辛だからね!」

「お前これ食えんのか?」

「僕こう見えて激辛得意だから」

「へー以外」



心底どうでもよかったので適当に相槌を打っておく。まあしかし12年間一緒に過ごしてきて初めて知ったことだった。

世の中知らないことのほうが多いなぁと、どうでもいい教訓を学んだ瞬間だった。

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