08 保海 健太➃

「健太はいい子だよ」お母さんの声が聞こえる。笑顔だ。いつもこんな感じだったらいいのになと思っているに、お母さんの怒った顔に変わってしまう。

 美穂もみんなそうだ。僕に優しく接してくれて理解しようとしてはくれなかった。

100点をとっても、お母さんが褒めてくれることはなった。次も同じように頑張りなさいだった。捨てないで、置いて行かないで。親なんだから、子どもの苦しみに気づいてほしかった。

お母さんが愚かな人間だったと気づいてのはいつのことだったんだろう。もう忘れてしまった。でも僕のことを忘れないでね、お母さん。


毎週行われていた手紙が亡くなったのは、桐本あやの手紙が無くなってからだった。弁護士から、あの手紙を書いていたのが、美穂の妹だったと聞かされた。何か悔しかった。僕で遊ぶ奴はお仕置きが必要だ。でも、もう叶うことはないのだろう。僕はもう、死ぬのだから。


真新しい囚人服に着て、髪の毛も多少切った。処刑台に吊り下がっている縄に首を通す。頭の中が死んでいくように、真っ青に染まっていく。青い世界は、大空のように温かくなくて、冷たかった。喉の渇きはもうない。心は泥水のように、濁っているが、僕の心を満たしてくれていた。もうすぐ、死ぬことができる。24年間の人生に幕を閉じることができる。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

乾いた心 一色 サラ @Saku89make

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ