04 保海 健太③
桐本あやという小学生らしき人物から、手紙が届くことがなくなった。状況が何か変わるわけでもない。
会いたいと願っていても、有川美穂はもういないのだ。それぐらい分かるだろう。何をしても、意味など何一つないのだ。
あのきちんと、冷蔵庫に埋め込まれたこの美穂の姿は、僕の頭の中にしか、もう現れてくれない。
看守から、何冊もの本と両親からの手紙を渡された。本はほとんどが、殺人事件を起こした人間の家族と遺族が書いた手記だった。
『健太へ
これら本を読んで、痛みを知り、美穂やその家族である遺族に償うようにしなさい。
お前は私たちの大切な子どもだ、私たちと一緒に、美穂さんとご家族にきちんと謝罪して、償っていこう。』
胸糞悪い言葉だらけだ。一緒に償うって何なんだろう。僕みたいな人間をこの世に生み出したことを悔やんでいるのだろう。何かしらしていないと、自分たちの行いに整理がつかないのだろう。こんなことをして、僕にとっては、本当に何の意味もないのに、何かしら、あの両親は僕にやらせようとする。
この前、面会に来たお母さんが、「ごめん、私が悪かった」と泣いていた。そんなに、悔しいなら、もっと僕の気持ちを汲み取る努力ぐらいしてほしかった。そんな情けない姿を僕に見せないでほしい。未だに、僕を理解しようとしないけどね。ショックだよ。親だったら、子どもの苦しみくらい気づいてほしいよ。
美穂は僕の悔しさに気づいてくれていたと思っていたけど、違ったよね。ちゃんと、まともに生きてほしいって言ってたけど、僕は真っ当な人生を歩んでいたよ。人を殴ることくらい、どうでもいいじゃないのかな。別に、すぐに死ぬわけでもないのだから。
みんな、僕を馬鹿にしてるけど、君たちも同じくらい馬鹿だということに気づくべきだよ。
桐本あや、君の手紙は、どうしても気に入らないんだよね。ここから、出ることになったら、君に会いに行くよ。どうな風に殺されたいかな。
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