第6話 感情の正体

 リビングで待っていると、コーヒーを目の前に置かれた。


「インスタントだけど、お前このコーヒー好きだろ。とりあえずこれを飲みながらやろうか。それで、わからない感情って?」


「……最近、友達…が出来たんだ。その友達に感じる感情がわからない時があって…」


「お前に友達、ねぇ……んじゃあ、質問してくからそれに対して答えてくれ。答えてる時に感情読んで双方で確認するわ」


「わかった」


 俺がそう答えると、恭介はコーヒーを飲んで一息ついた後、口を開いた。


「じゃあ、一問目。その友達とどこに出かけたい?」


「相手が……相手が行きたい場所に着いていく。俺に行きたい場所はないからな」


「二問目。友達が誰かと話しています。何の話?」


「何の……趣味とかそういう……んー……俺の、話とか?」


 そう言うと、「うーん……」と唸りながら頷いている。


「何となくだけどわかった。これで決定する可能性が高いから、言うぞ」


 俺はそれに対して頷く。


「“その友達に恋人ができます。それを嬉しそうに友達は貴方に報告します。貴方はどう感じる?”」


 その瞬間、心の中に黒いドロドロとした感情が出てくる。その黒い感情は、ぐるぐると心内から思考へとくる。


「………あいつが幸せなら別にいい……でも、何故か嫌だ。この感情がわからないんだ。わからないわからない……これは何なんだッ?」


 俺が頭を抱えながら強い口調で言うと、恭介は俺の腕を優しく掴んでこう言った。


「零、それは“嫉妬”って言うんだぞ」


「“嫉妬”?」


「普通誰でも嫉妬はするものだ。どんな些細なことでも嫉妬は起きる。でも、お前の嫉妬は明らかに友達へ向ける嫉妬じゃない」


「どういうこと…だよ……?」


「お前……そいつに“恋”でもしてるんじゃないか?」


 恭介にそう言われた時、自然と頭の中でパズルのピースがハマった気がした。


 恋……それは人を愛して一緒に生涯を過ごしたいというもの。


 誰にも取られたくないのも、ずっと俺と一緒に過ごしてくれると思っていることも……全ては俺が咲夜に恋をしているから……。俺の心や思考は、それに対して考え、感じているんだ。


 あぁ……何だ、俺は咲夜が好きだったのか……。


「それと……」


「それと?」


「お前の嫉妬の感情はあまりにも過敏すぎる。どんな些細なことでも大袈裟になるほどの嫉妬を抱いてる。その嫉妬は無意識に、だ。気を付けておけよ」


 真剣に俺の顔を見ていう恭介は、何かを心配しているような顔つきだった。そんな恭介に俺は笑顔で


「これで俺がしなくちゃいけねぇことがわかった。感謝するぜ、恭介。俺、明日からその友達を傷付ける奴は“殺す”ことにしたわ」


と言うと、恭介は気難しい顔へと変えた。


 何故なら、咲夜を守れるのは、今この時点で“俺だけ”なのだから_______。

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