第3話 集会

 一条咲夜と別れてから一週間、俺はあの公園に放課後通うようになった。それはやはり、一条咲夜がいるからと言うのと、知らず知らずの内に彼の隣で喋ることが当たり前のように感じてきていたからだ。


 本来ならあり得ない。白騎士の教団かも調べないで、見ず知らずの子供とここまで親しくなることなんて……本来の俺なら……。


「赤羽さん?」


 一条の声ではっとして、彼の方に目線を戻す。一条は俺の顔を心配そうに見ている。


「スマホ、鳴ってますよ」


 そう言われ、ポケットに手を入れると、確かにスマホが振動していた。相手先を見ると佐藤さんからだった。


 一条から少し離れ、通話ボタンを押し、耳にスマホを当てる。


「はい、赤羽です」


「おい、零。お前今どこにいる?」


「今、ですか…今はちょっと寄り道をしていて、これから帰るところです」


「寄り道だぁ!?お前、今日集会だろ!?まさか忘れてたんじゃないだろうな?」


 集会という言葉に慌ててスマホ内のカレンダーを確認する。そこにはきちんと“集会 16:30”と書いてある。今の時間を見ると17:00、30分も過ぎている。


「……すみません。今すぐ行きます」


 俺はそう言って通話を切った後、一条が居るブランコまで戻り、荷物を持つ。


「もう、帰っちゃうんですか…?」


 一条は俺の顔を見て悲しそうな顔をして言った。


 どうしてか、その時胸が酷く締め付けられるような感覚に襲われた。その感覚が分からない。


 だが、俺はすぐにでも行かないといけない。この感情を押し殺して……。


「悪い、今すぐ帰らないといけなくなったんだ。また明日、ここに来る」


「そうなんですね……分かりました」


 俺が去ろうとした時だった。一条に袖を掴まれた。


「一条?」


 振り返った俺の頬に柔らかいものが触れた気がした。


 固まっていると、一条は俺から離れて


「いってらっしゃいとまた明日という意味を込めて」


そう言って去っていった。


 俺は何をされたのかと思考を回していると、一条が俺の頬にキスしたのだと分かった。顔に熱が集まるのが分かる。今までにない感情と出来事を処理するのに時間がかかった。


 集会には、フードを深く被った状態で参加した。まだ処理が追いついていなかったし、明日どんな顔をして会えばいいのだろうかと無駄な思考ばかりを回していて、今回の集会の内容なんて聞いてもいなかった。


 まさかその内容に、一条について語られているなんて知らずに……。

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