第2話 少年
ガヤガヤ……ガヤガヤ……
今日も学校内は騒がしい。話題は全て今朝ニュースで取り上げられている“赤ずきん”、俺の話題ばかり。
「なあ、聞いたか?赤ずきんって変な能力あるんだってよ」
「そうなのか?手際がいいとかじゃなくて?」
「馬鹿ね〜。未だに誰も姿を知らないのよ?能力があってもおかしくないわよ」
周囲に話題にされるのは別に悪い気はしない。ただ憶測で殺人方法やその容姿を言われるのは好きではない。
人間とは、本当に憶測で物事を語るのが大好きな生き物だ。語られている相手がどんな気持ちでいるかなんて、知りもしないのだから。
夕焼けが照らす校舎からは、生徒達がわらわらと出てくる。その中に俺も紛れ込みながら帰路への道を歩いていた。
その帰路で、公園で一人ブランコを漕いでいる中学生くらいの少年がいた。
今の時間帯、人を殺すのには最適とは言えないが、早く家に帰れる利点がある。ただ、返り血を浴びれば疑わしいのだろうけど。
今日殺すのはあいつでいいか……。どう見ても独り身で殺しやすそうだ。そう俺はその少年を見て思った。
だが、白騎士の教団かどうか分かってはいない。このまま殺してしまえば、また上から何を言われるかわかったもんじゃない。とりあえず、白騎士の教団かどうか分かる宝石をかざそうとしたその瞬間、少年がブランコから消えていた。
慌てて探すと、目の前に立っていて、反射的に後退りをした。
「あの、手、怪我してますけど……大丈夫ですか?」
「手…?」
自分の手を見ると確かに何処かで切ったのか、血が出ている。
考え事して気付かなかったのか?
「よければ絆創膏どうぞ。僕もう帰りますから」
「え…?あ、あぁ、ありがとうございます……」
「それじゃあ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
「はい?」
俺は自分でも何故声をかけたのか分かっていない。
何故俺は今彼を止めた?ここで早く殺して帰るためか?それとも……いや、それより何か発さなくてはいけない。怪しまれる。
「き、君はいつもあそこのブランコに乗っているのか?」
咄嗟に出た言葉は明らかに相手のプライバシーへ踏み込んでいた。
「うーんと……そう、ですね。僕、嫌われてるから…あそこしか落ち着ける場所がなくて」
そう言った彼の顔は困り顔だった。俺は「そうなんだ」としか答えられず、その場で沈黙が起きたが、その後軽く会話をして別れた。
この日、そうこの日が後に俺の人生を変える、一条咲夜との出会いだった。
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