少年を愛してしまった殺人鬼
黒木雫
第1話 殺人鬼の生活
「昨夜、〇〇区△△で殺人事件が起きました。被害者は30代の女性、殺害の手口から先日起きた連続殺人事件の犯人、“赤ずきん”だと警察は_______」
朝から殺人事件を取り上げているニュース番組に飽き飽きした俺は、テレビの電源を落とした。
「朝からやっていいのかねぇ…」
いつもの日常を過ごす家族からすれば、暗い気持ちでスタートをきることになる。暗い気持ちになるのかどうかは個人個人の価値観で変わるものだが。
そのとき、着信音が部屋に響き渡った。スマホを取り、電話相手を確認してから通話ボタンを押した。
「はい、もしもし」
「あぁ、よかった。出たな。お前、今朝のニュース見たか?」
「“赤ずきん”の事件ですよね」
相手は黒騎士の教団でお世話になっている先輩、佐藤裕太さんだ。職業はよくは聞いていない。
「そうそう。お前もよくやるよな、こんなに大事になってんのにバレないなんてな。“災厄の赤ずきん”さん」
彼は俺のことを“赤ずきん”と呼ぶ。そう、まさに俺は今巷を騒がせている“赤ずきん”で間違いないのだ。
俺がしばらく黙っていると、佐藤さんは静かにため息をついた。
「上から言われてるぞ。目立ってくれるのはありがたいが、これでは悪い評判しか生まないってな」
「すみません」
「別に謝ってほしいわけじゃない。とりあえず、お前、今白騎士の教団じゃない一般人を殺してるだろ?上から白騎士の教団に絞れって言われてる」
「それはまた………難しいことを言いますね」
佐藤さんの話を聞きながら俺は再度コーヒーを飲む。朝の日課であるため、自然と体が動いてしまう。
白騎士の教団は俺らがいる黒騎士の教団とは敵対している特殊能力持ちが集まっている。この二勢力は、領域戦争をしている。
今現在、勝っているのはこちら側ではあるのだが、政治家の中に白騎士の教団の団員が多く存在している。そのため、いつ立場が逆転してもおかしくないのだ。
「俺が伝えたいことはそれだけだ。高校に遅れないようにな」
「わざわざありがとうございました」
ツー、ツーと、通話終了の音が鳴る。スマホをテーブルの上に起き、制服を着に自室へと戻った。
制服を着た後、テーブルの上にある食器を洗う。
この家には、俺だけしかいない。静かな部屋にはいた形跡はあるけれど、両親の姿はない。一人しかいないこの空間は、あまりにも空虚だ。
皿を洗い終わり、スクールカバンとスマホを手に取って玄関へと向かう。玄関の鍵をポケットにしまい、靴を履く。
「行ってきます」
氷のような冷たい空気が流れる部屋に、俺は声をかけて学校へと向かった。
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