おわり
わたしが大学を卒業し、就職のために土地を離れ、東京で落ち着いた生活を送るようになった頃、母が亡くなりました。お葬式のために土地に帰ると、そこにはやはり道代おばさんの姿がありました。
「あたしももう出て行こうと思ってさぁ」
道代おばさんはそう言って笑いました。相変わらずあっけらかんとした美貌の持ち主です。母の死に顔はとても穏やかでした。お葬式の手伝いは、道代おばさんだけにお願いしました。
翌朝目を覚ますと、母の骨壺と道代おばさんが姿を消していました。別に驚きません。それよりわたしにはやらなくてはならないことがあります。
几帳面な性格だった母のおかげでほとんど物のない実家を整理し、平屋の家を取り壊し、更地にします。わたしはもう二度とこの土地には戻らないので、こんなただ広いだけの家は不要なのです。母の花畑も、井戸ももちろん壊します。でも井戸を壊す際にはお祓いが必要らしいので、お山の神社から宮司さんをお呼びします。
儀式を終えて壊された井戸の中から、成人男性の遺骨がふたつ出てきたという報告を受けます。少し調べれば誰の骨なのかはすぐに分かるでしょう。どちらが始めたことなのかをわたしは知りません。でも彼女たちが彼女たちであるあいだ、本当に幸せそうだったことを覚えています。
井戸端の女たち 大塚 @bnnnnnz
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます