第5話

 少しややこしかったが、ミランダの話はこうだ。

 ある合金がある。その合金は軽く衝撃を吸収しやすく腐食にも強い。ただ製造には莫大なコストが必要だった。それの低コスト化を可能にしたのがブリトニー・ライス。正確には九割完成といったところらしいが。

 それを知ったペレは製法をコスモメトリクスに流そうとブリトニーに近づいたがガードが固く、痺れをきらして詰め寄ったところをマイスキーに見つかったそうだ。


「身の危険を感じたブリトニーは身を隠した。ここまではいいか?」

「はい。そして昨夜の事です。セキュリティシステムに不備がないか総点検しろとペレ管理部長から指示があり、一時間ほどシステムが停止。その間にブリトニーは、妹は姿を消しました」

「だったらペレが怪しいに決まっているじゃないか」

「狂言を仕掛けておきながら、どの口でペレを糾弾するんだ? それに証拠もないのに嫌疑をかけられない。相手はコスモメトリクス第二事業部長の息子だ。それを切っ掛けにして大本に睨まれたらトンプソン・プラント社は吹き飛ぶ」

「そうかもしれないけど人命にはかえられないだろ!」

「だから、俺たちがいる。俺たちが上手くやればいい」

「どうするというのですか?」


 ミランダの疑問は最もだ。まあ、やりようはいくらでもある。そうだな、ミランダにも一肌脱いでもらおうか。ブリトニーはフォトでしか見ていないが姉妹だけあって似ている。髪さえ何とかすればいいだろう。


「ミランダ、ブリトニーもでかいのか? 違う、そっちじゃない。背が高いのかを聞いている」

「私よりブリトニーの方が数センチ高いです」


 問題ない。ミランダには囮になってもらおう。


「ペレを釣り上げる。ミランダはブリトニーに変装してから居住ブロックを適当に移動してくれ。慌てている感をだせるならなお良しだ。囮になってもらうが危険はない。信頼してくれるか?」


 よし、良い目だ。


「アランはペレを管理室コントロールセンターに呼びだせ。前にやったやり方だ」

「わかった。タイミングは?」

「近距離通信用のインカムを着けろ。ミランダに予備のインカムを渡しておけ。いいか、俺たちはチームだ。目的はブリトニー救出。大丈夫。すぐに終わる」


 アラン、ミランダを順番に見る。動揺もない。気負いすぎてもない。

 あまりこういうのは好きではないが、景気づけも必要だろう。

 右手の拳を突き出と、アランがゴツンと合わせる。二人でミランダに促すと、おずおずと合わせてくれた。

 コツン。しまっていくぞ。

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