第6話
ミランダの仕込みが済んで
「マイケル。アランは?」
「ペレの近くに待機している」
よし、作戦開始だ。アランとペレの映像を確認する。
「アラン、いいぞ。始めろ」
『了解』
モニタ内のアランが動いて消える。別モニタにいるペレの所に現れ、慌てた様子で何かを伝えていた。いい演技をする。音声がないのが残念で仕方がない。隣で食い入るようにモニタを覗き込むミランダが怪訝な顔をしていた。
「アランのセリフはこうだ『セキュリティカメラでブリトニーが確認されました』」
予想どおりペレは驚いているな。アランに先導され、
次から次へとモニタを移動する二人。
オペレータの操作でブリトニーに扮するミランダの映像を確認する二人を背後から眺める。アランが口を動かし、先に部屋を出た。
ミランダが解説を求めている。
「『マイケルと合流してブリトニーを追います』といったところだ」
少ししてからペレが部屋を出た。別モニタから見えるペレが進むのはアランとは逆の方向。釣れたな。インカムでオペレータに連絡を入れる。
「マイケルだ。ペレを補足しているな? ……よし、定期的に位置を教えてくれ。アラン、聞こえていか。ペレを追いつつ合流する。ミランダは……」
「私も行きます。ブリトニーは私の妹です」
安全ではない可能性があると言っても聞かなさそうだ。それより説得する時間が惜しい。もしもの時はアランが盾になればいい。ついてこいと促すと力強く頷いた。できれば待機していてほしいが。
「この先は資源保管庫です。採掘された資源が保管されています」
「そこにセキュリティカメラは?」
「ありますが、広い倉庫なので死角も多いかと」
「そこにブリトニーを監禁できる場所はあるのか?」
「すいません、そこまでは――」
『あるぞ、今は使っていない資源管理室がある。そういえばカメラが壊れたまま放置されていた』
この声はマイスキーか。
『社員用オープンチャンネルを使って面白いことをやっているな。安心していい。ペレはこのチャンネルを知らん』
ミランダめ、なんてチャンネルを使わせてくれる。
『それより助けはいるか?』
「結構、荒れ事には慣れている。大船に乗ったつもりで……いや、
『わかった。儂たちの家族を頼む』
資源管理室は資源保管庫の奥にあった。昔はこちら側から搬出していたらしい。
その部屋は窓なんてものはなく中の様子は伺えない。とりあえずアランを待つか……丁度来たな。
「今、どんな状況?」
「ペレはそこの部屋に入っていった。中の状況はつかめん」
「待っていても仕方がないよ。踏み込もう」
無計画にアランが動くのを止めようとした時、ドアが開いて鉢合わせしてしまった。一瞬、固まるペレとアラン。開かれたままのドアの隙間から横たわる足を見つけて飛び出すミランダ。
くそっ! 滅茶苦茶だ!
アランより一瞬早く動くペレ。その右手にあるのは……アンカーガン。岩盤にアンカーを撃ち込む機器。それは十分すぎる凶器となる。
早く動いたのはいいが、数人に詰め寄られる形になったためアンカーガンを構えるのが遅れていた。
狙いが定まる前にアランを突き飛ばす。一瞬遅れて発射音。俺のスーツに穴が開いただけですんだが、こんなのでも一張羅だ。なんてことしやがる。
「お前! 僕に逆らうとこんな会社消し飛ぶぞ!」
悪いな。俺はこの会社の人間ではない。ただの、探偵だ。
銃口が俺へと動く。しかしこの距離なら何とでもなる。銃口が持ち上がる前に手首を掴む。そのまま発射され床にアンカーが撃ち込まれた。手首を捻り、捩じ上げる。痛みから逃げようと体を浮かせたところでさらに捻る。ペレは回転し、頭から叩きつけられた。
軍警察で培った技術は今でも体が覚えていた。あの頃の記憶は忘れてしまいたいのに不思議なものだ。
ペレは失神し宙を漂っている。アランに拘束させ、室内を除くと抱き合う姉妹が見えた。あの様子ならブリトニーは無事か。
俺たちの仕事はここまで、後始末は
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