ドラゴンスレイヤー

アホ

第1話

私には夢がある。それは御伽話の騎士になる事だ。なぜ志したのか、一冊の本を読んだのがきっかけだった。

父が誕生日に買ってきた。子供に読み聞かせせる類の昔話の本だった。

内容はただ一国の騎士が姫のために命をかけドラゴンに挑み姫を救う物語だ。

私は子供ながらその騎士の生き様に憧憬を抱いた。私はその日から父に木剣を買ってもらい日々物語の騎士に近づけるよう毎日木剣を振った。まだ小さかった私には当然難しかったが歳を重ねるにつれ、上手く振れるようになっていった。私は情景に近づいていっている事に喜びを覚えていた。そんな私はある出来事をキッカケに挫折を憶えたんだ。

父は遊びもしないでいつも木剣を振っている私を見て何を思ったのか、憧れの騎士が私の家に来たのだ。

「君がシャラン君かな」

騎士はどうやら私の事を知っていたみたいで当時は柄にもなく喜んだ記憶がある。

今思えば父が私の為に読んでくれたのだろう。

「私が君の道となろう」

その騎士は私と同じ木剣を持って対峙してきた。私はこの時憧れの騎士に木剣とはいえそれを向けられた事に恐怖を覚えていた。

騎士は私に近づきただ一歩前に振り下ろしただけだが木剣の刃が見えず私の目の前まで来ていた。

「次は君がやって見せたまえ」

私はその時、憧れの騎士に私がもてる最大の踏み込みをもって木剣を振り下ろした。

騎士はただ剣を斜めに滑らせただけで私は体勢を崩し、思いっきり膝を崩した。

「立ちなさい」

騎士はただその一言で私の心に闘志を燃やし立ち向かっていった。何度も何度も転んでは立ち上がり挑んでいった。だがそんな意思も虚しく騎士には一片たりとも私の木剣が届く事はなかった。私は虚無感を覚え、ただみっともなく泣いた。そんな私に騎士は一言

「たとえ挫けても強くありなさい。それが貴方を強くします」

その言葉を残して騎士は去っていった。

俺はその言葉を胸にまた夢に向かって歩み始めた。

私はその日からただ木剣を振るだけではなく、どうすれば早く上手く振れるのか考えなが振った。そしてここが一番の変化だった。

騎士に負けた事を機にどうすれば当たるかどうすればあの騎士を超えられるかとあの時に記憶を元にずっと木剣を振っていた。

その日から10年の年月が流れ私は15となった。

ようやく騎士団に入団できる年齢だ。

私は入団試験に合格し父と離れるため、男で一つで育ててくれた父に感謝の意を示し、頭を下げた。そんな私に父は懐から重みの乗った布を渡してきた。私は父から餞別を受け取り感謝を示す事しか出来ず、ただ泣いてしまった。

父はそんな私の頭撫で重い口を上げた。

「お前は私の自慢の息子だ」

この言葉を聞き私はこの時、父の期待に恥じない男になろうと誓った。

私は荷物を持ち家を出て馬車に乗り込みルーク王国へ向かった。

三日の時間を要しルーク王国に到着した。

門番に騎士団の証明書を渡し、ルーク王国に足を踏み入れた。私はそのまま迷いない足取りで寮に向かった。

寮には私と同じ騎士団の入団試験を合格した人が集まっており、寮の管理者から9号室の鍵を渡された。私は左奥へ進み階段を3階程上がった所に私がこれから生活する場所に着いた。私は鍵を開けようと思うとすでに空いておりこれから同じ寮生活をする仲間が先に来ていたと悟り、ゆっくりと扉を開けた。

中にいた確認すると視界に写ったのは少し金髪がかった美丈夫の青年だった。青年は私の事を確認すると挨拶をしてきた。

「私はシャーリック・ローマン。これから宜しく頼むよ」

私は彼の自己紹介に答えた。

「私はクロメスと言います。これから宜しくお願いします」

私は貴族に対して最大の騎士な敬礼を返した。

「硬いなぁ」

彼ははクスクスと笑った。

「そうだなぁ、これから説明があると思うし一緒に行かない?」

私は貴族の申し出を断れるはずもなく頷いた。彼に私の出自を話していた。

「そっかぁ、平民上がりなんだ。すごいね」

「はい、私は努力したので」

「そっかぁ」

彼はまたクスクスと笑った。

平民上がりの騎士は珍しく基本的騎士学校を卒業した者から入団する。ただし類稀なる才能を示した者には、特別に試験受けさせる事がある。

「でもどうやって、試験受けたの?」

私は当然の疑問だと思い答えた。

「ある騎士の方の推薦で試験を受けさせてもらう事になりました」

「あぁ君がその人物か、納得だよ」

彼はどうやら納得したらしく何回か頷いた。

「ついたね。座って待ってよっか」

私達は指定された場所に着き彼の言葉に頷いた。

少し時間が経ち私達以外の新しく入団した騎士が集まりはじめていた。私はそろそろかと思い緩んでいた気を入れ直し背筋を正した。

入団者全員が集まってのをある一人騎士が確認すると何処かへ行き誰かを連れてきた。

格好を見るに騎士である。私は説明をする人物かと思った。実際その通りだったので特になんとも思わず思考を流した。

騎士は私達の前に立ち話し始めた。

「貴様らは厳しい試験に合格しよくここまで辿り着いた。私はこれから君達の事を同志として接する。その為これから騎士の心構え学んで貰うため実際に任務を与える。」

その言葉を聞いた私は心を震わせまっすぐと前に立つ騎士を見ていた。

「最初の任務は勿論女王様の護衛だ」

これは毎年行なっている騎士団の入門式の形だ。私達は5日間女王様の謁見の場に立ち、王国を守る心構えを学ぶ儀式が行われる。

私達が女王の前に立てるのはこの瞬間しかなく謁見に場置かれる事自体が大変栄誉なのだ。勿論私達は立つだけで近づく事は許されない。もしその様な素振りを見せたら即座に首が飛ぶ。その異様な緊張感の中で護衛をするため私達はそこで王国を守る騎士である事を深く実感しなければならい。

私はただその栄誉を受け取ることをずっと待っていたため必ずや女王様を守ると私の夢に誓った。

その日それで解散となり各自訓練場に赴いた。もちろん私も剣の腕を鈍らせないため黒銅の剣を握って素振りをした。

この剣はただ重く丈夫なだけの剣だが私とは相性が良く、騎士を越えようと決意してから父に貰ったものだ。そのため私の半身とも呼べるものだ。

私は鍛錬を終えて寮に戻り、夕食取る準備の手伝いをしていた。これは入団試験の時の妬みの視線を逸らす為生まれた私なりの処世術だった。それが習慣となりここでも手伝う事にしたのだ。

手伝いを終え夕食を一人で食べ終えた9号室に戻っていった。

一人で歴史の学習をしていると同じ部屋のシャーリックが夕食を食べ終え戻ってきた。私は少し予定の時間より大幅に遅れて帰ってきたため少し疑問に思ったが食べるのが遅い人なんだなと結論付け歴史の学習に戻っていった。

「やっぱりここに居たか。ようやく見つけたよ。さぁ食べに行こう」

彼はどうやらず私を探して夕食を食べていないらしい。私は申し訳なさを覚えてついて行く事にした。

「なんだ、先に食べていたのか、心配して損したよ」

彼は食堂に私の姿が現れなくてずっと探していたそうだ。私は彼の行動に罪悪感が芽生えたが少しうれしく思っている自分に驚いた。

「じゃあ明日は一緒に行こうな」

私は断る理由もないため頷いた。

彼の夕食を食べ終えるのを待ち、9号室に戻っていった。

「ところでクロメスはどうして騎士になろうと思ったの?」

先程の続きの話を求めいるのだろうと私は判断し過去の話をした。

「へぇー、意外だな。案外ロマンチストなんだね」

私は彼の言葉を否定できずただ頷いた。

それからも彼と消灯するまで話し込んだ。

私は初めて感じる心の動きに身を任せていた。





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