第4話 12月の贈り物2-4

「要らねえ。」

 俺の第一声だった。

「え?」

 魔の神ニッネカイムは意味が分からない。

「もうオーディンのグングニルの槍も持ってるし、ポセイドンのトライアングルも持っているから、今更、ニッネカイムの槍を貰っても仕方がないんだよね。」

 そう、俺は上級プレイヤー。ほとんどの神を倒し、レアなアイテムは手に入れ済みである。

「そんな!? そんな悲しいことを言うなよ!? やっと俺の出番がやって来たのに!?」

 乱心する魔の神。

「そう言われても。」

 ポリポリ頬をかいて困る蓮。

「分かった! なら、俺を倒したらアイヌ民族の黄金伝説を教えてやろう!」

「なに!? 黄金伝説!? 教えてくれ!」

 俺はゲームの中での会話から繋がる次の選択肢が好きだった。

「知りたければ、この俺を倒すんだな! ワッハッハー!」

 威厳を取り戻した魔の神ニッネカイムが漣の前に立ちはだかる。

「いいだろう。勝負してやろう。」

 陸は火縄銃を取り出す。

「そんな鉄砲が神に聞くと思うなよ!」

「それはどうかな。」

 陸は火縄銃の引き金を引いた。

「え?」

 火縄銃からビーム光線が放たれる。

「ギャアアアアアア!?」

 ビームは魔の神ニッネカイムの胸を貫いた。

「火縄銃からビームだと!? そんな火縄銃ある訳ねえじゃねえか!?」

「今大会は和モノしか使えないんだ。当然、刀や鉄砲をカスタマイズしていて当然だろう。何なら光る手裏剣もあるぞ。」

 陸はビーム手裏剣も所持していた。

「カスタマイズ!? ふざけるな!?」

 魔の神は漣の改造に恐怖した。

「吐け! カムイの黄金はどこだ! さもないと、これで終わりだ!」

 漣は高出力高エネルギーを火縄銃にチャージする。チャージされたビームは一撃で魔の神を消滅させられるくらい強力だった。

「参りました!? だから命だけは取らないで!?」

 白旗を上げて命乞いする魔の神ニッネカイム。

「いいだろう。聞かせてもらおうか? アイヌ民族の黄金伝説を。」

 漣は魔の神ニッネカイムを服従させた。

「アイヌ民族の黄金は阿寒湖に眠っている!」

「なに!? 阿寒湖に!?」

 アイヌ民族の黄金は阿寒湖の底に沈んでいた。

「しかし、この寒さと大量のマリモに守られて誰も取り出すことができないのだ。残念だが諦めるんだな。」

「よし! 黄金をゲットするぞ!」

 しかし漣はアイヌ民族の黄金を手に入れるつもりだ。

「おい!? 俺の話を聞いていたのか!? 無理だって!?」

「無理? そんなことはやってみないと分からないじゃないか。だって、それが冒険だろ。」

 漣は宝くじを買うタイプの人間だった。外れると分かっていても、買わなければ当たることはない。しかし宝くじを買えば、当たるかもしれないという夢が買える。

「そんな恰好じゃ死んじゃうぞ!?」

 破天荒な漣に魔の神ニッネカイムの方が心配する。

「大丈夫。俺の体は年中適温に設定できるから。」

「はあっ!?」

 漣は過去のVRWで得た特殊スキルを持っていた。大概のことは特殊スキルや特化スキルで何とでもなるのだ。

「じゃあ、ちょっと行ってくる。」

 漣は寒い阿寒湖に飛び込んだ。

「なんていう人間だ!? あんな人間がいたら神なんか要らないだろう。」 

 ニッネカイムは自分の存在が悲しくなった。


「やったー! 1万円! もしかしたら私ってゲームの才能があるんじゃない? これで大学の推薦も受けられるわ!」

 その頃、学生の部に出場中の結奈は残り100人にまで残った。今の時代、ゲームの成績が良ければ大学に推薦入試ではいれるのだ。大学側も優秀なゲーマーを入学させればゲーム大会で自分の大学の名前を売りだせるからだ。もちろん入学金や授業料は免除である。

「出場者の数も100人になった所で戦いの舞台を変更します」

 広い日本全国では勝負が着かないので、残り100人になった所で狭い所に戦いの舞台を移す。

「今回の舞台は、月です!」

 ゲームなので設定は何でもありである。

「わ~い! かぐや姫になったみたい!」

 月に瞬間移動させられた結奈は無邪気に月でウサギの様にはしゃぐのであった。

「はあっ!? あなたたちは何者!?」

 結衣なの左右に男が二人いた。

「私は風神。」

「私は雷神。」

「風神? 雷神?」

「マスター結奈は雷門に1時間以上滞在できたので、私たちを従える権利を獲得しました。」

「何なりとお申し付けください。マスター結奈。」

「私がマスター!? ゲームって、意外と面白いかも!? あはははー!」

 結奈は勉強を忘れて、ゲームの世界が好きになってきた。


「おまえがこの湖の主だな!?」

「はい。その通りです。」

 漣は阿寒湖の底にたどり着いた。そこではマリモの妖怪が待ち構えていた。

「カムイの黄金の有りかを知らないか?」

 漣はマリモにカムイの黄金伝説を尋ねてみた。

「知っていますよ。教えてあげてもいいですけど、その前に一つお願い事を聞いてください。」

 漣は阿寒湖の底でマリモにお願いをされるのであった。

 つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

12月の贈り物2 渋谷かな @yahoogle

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る