第2話 12月の贈り物2-2
「それではVRW大会を行います。優勝賞金は1億円です。」
いよいよ大会の日がやって来た。
「蓮、がんばって!」
俺は学校に行かないでゲームばかりしている危ない人が多い成人の部に出場する。なぜなら優勝賞金が1億だからだ。
「俺が優勝するのは当たり前だ。それより結奈。おまえもがんばれよ。」
「ありがとう。やれるだけやってみる。」
結奈は18才以下の学生の部に出場する。学生の部も大学受験よりプロゲーマーになろうという人間の方が人口が多かった。なぜなら優勝賞金が学生の部でも100万円もらえる。学生には十分なお小遣いだ。
「それでは今回のルールを説明します。時間は無制限。最後まで生き残った一人が優勝です。それではVRW、ゲームスタート!」
こうして大会はスタートした。
「あちゃ~。ここどこだよ。隠れる所がないじゃないか。」
俺は北海道の大草原の釧路湿原に飛ばされてスタートした。
「今回の参加者が100万人。きっと北海道にも10万人以上はプレイヤーがいるだろうから、まずは北海道で1番にならないとな。」
結構、余裕はあった。なぜなら10万人いても強いプレイヤーは100人くらいしかいない。それでも大会に出場すれば数万円の参加料がプレイヤーに給料として支払われるので、1カ月で4回大会にエントリーすれば、下手な社会人の月給より多い。そういうプレイヤーは戦わないで数が減り自身の賞金が上げるために、他人が負けていくのを待っている。
「でやー! 勝負だ!」
堂々と戦いを挑んでくるのは、初心者か自信過剰のアホしかいなかった。それでもゲームでお金がもらえて生活ができる時代がやってきたことは朗報である。
「うっ!? やられた!?」
俺はほとんど動かずに一人目の雑魚を倒した。俺の剣は相手には見えなかったはずだ。俺のアバターは最高レベル到達からの特化しまくりなのである。余程の敵に出会わなければ負けることはない。
「それにしても、今回はプレイヤーの脱落ペースが速いな。誰か雑魚狩りでもしてるのか?」
雑魚とは、お金のために逃げ隠れしている人たちのことをいう。仮に100万人には参加料として3万円が支給される。しかし、残り50万人にまで生き残れば支給金額は6万円になり、残り25万人で9万円、残り10万人で15万円。そして残り100人で100万円。そこから100万円づつ賞金はあがり、優勝者は1億円の賞金を手に入れられる。簡単なルールだ。だから学生の部より成人の部に出た方が割が良い。
「とりあえず近い釧路でも目指すか。」
俺は初期配置から近いの都市の釧路を目指す。ゲーム内とはいえ最低限の都市を拠点にしなければゲーム内の生活が苦しくなるからだ。VRWで怖いのは敵のプレイヤーではない。大自然だ。北海道なら雪に降られたら、ほぼ凍死。他でも台風や津波に巻き込まれれば、ほぼ半分以上のプレイヤーが退場させられてしまう。後、コロナウイルスみたいな病気も大敵である。だからアバターの健康管理、病院のある都市を拠点にしなければ生き残るのは難しい。
「手応えがないな。この調子なら楽勝だな。」
もうすぐ釧路の街に着く。それまでに10人位と遭遇したので戦ったが楽勝。
「はっ!? しまった!?」
その時だった。どこからか手裏剣が飛んできた。俺は油断していた。
「カキーン!」
手裏剣は俺の周囲に張り巡らされている見えないバリアに弾かれた。俺は死亡を免れた。
「危ない、危ない。バリアを貼っておいて良かったぜ。」
VRWは普通にレベルは戦って経験値を得れば上げれる。問題は、それ以上だ。本人の努力次第でありとあらゆる特化を習得することができるのだ。この見えないバリアは以前の大会で得たものを今回の大会に引き継いでいる。特典として数に制限はあるがスキル・能力・アビリティを引き継ぐことができる。だからVRWを長く続ければ長く続けただけ有利になる設定ではある。
「手裏剣? 忍者か? 今回の全プレイヤーは侍のはず。ということは忍者はNPCか!? なるほど。忍者が隠れている雑魚を狩っているのか。」
俺は現状に納得した。
「よし! これから忍者と戦って忍者スキルをマスターしてやるぜ!」
強い者に戦いを挑み倒したり、自分と違う職種と交流する。そうやって新しい技をアバターに覚えさせるのだ。これがVRWの醍醐味である。そして、それは平日の通常ホストより、大会中の方が運営側が用意した目玉NPCの方が良いスキルが得られる方が多い。かなり危険ではあるが。
「いくぞ! 見えないものを見る目!」
よく、ホークアイとか言われることが多いスキル。俺には隠れている忍者の姿がはっきりと見える。
「14人!? 俺は忍者に囲まれていたのか!?」
これが知ると怖いという奴である。
「やってやる! 俺は侍忍者になるんだ!」
俺の目的は侍と忍者の特化複合ジョブになることに決めた。
つづく。
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