第17話 侵入しました! ここはどこでしょうか!?
「さて、本格的にどこだろう」
堂々と息巻いて影の中に入り込んだのは良いのだが、闇夜の中を歩くと言うのは少し辛い。
何も見えないし、何も感じられない。
それに気のせいか、音も聞こえない。
「どうしよう………」
何も感じられないこの状況に徐々に恐怖心が煽られ闇の中を踏み入れるのも少しだけ躊躇いが発生してしまう。
そんな中、僕はどうしようどうしようと呟きながら足を踏み入れながら屋敷を歩く。
確か、書物の中にこんな似た状況を書いていた小説があったな………あれを読んで、夜中、起きることができなくなったことはきちんと覚えている。
毛布から抜けると良そうな気がして、本当に怖かった。
「うぇ、どこだょぉ……」
泣きそうになる。
今井この場にいる状況がとても怖くて、目尻には涙を溜めているが、歩くたびに息が荒くなる。
心拍数も高くなり、もうこうやって歩いている時点でも案外、辛い。
踏み入れる度に、ぎしっ、ぎしっ、と木が鳴るのも怖いし、息がどんどん苦しくなるのもつらくなる。
それに気のせいか、鉄の香りがする。
「あはは、等々馬鹿になっちゃったか?」
嗅覚も馬鹿になるなんて僕はどれほど、怖がっているんだ。
考える度に最悪な方向した浮かばない。良き
鉄の香りから、どれほど心地良い風景しか浮かばない。
意味が分からない。
理由が分からない。
内含がわからない。
あぁ、どうしたものか。本当に頭の中がぐちゃぐちゃになるそうだ。
脳みそが水になって耳から漏れ出してしまう程、おかしくなりそうだ。
『脳みそが水になるんですか? なら、チョーダイ』
「!!?」
すると、声が響く。
どこからかと思い、辺りを見てみるがそこには何もない。
あるのは影。真っ黒な影。
何も見えない状況に、僕は一瞬、鳥肌が立ち体温が奪われるように感じた。
「え、え、なに」
既に疑問形が浮かぶほどでない程、僕の中にはありえないほどの緊張が走る。
何だ。
何か。
体の中にある本能的な危機感が最大限に警鐘を鳴り響かせる。
だが辺りには何もいない。
「………な、なんだったの?」
聞き覚えの無い声に、僕は果ての無いほど寒気を抱きながら屋敷の廊下を歩く。
にしても、僕は今どこを歩いているのだろうか。
歩を進める度に、その足は目的地から遠くなっているような気がする。
「気を楽にして考えるか……」
そうだ。よろしくない方向ばっかり考えるから、変な事が起きるのだ。
だったら、ほんの少しでもまともな考えを持とう。
ポジティブ。何事もポジティブに!
心の中で僕はそう唱えながら、ゆっくりと歩を進め続ける。
『こっちに来るな!』
「!!?」
瞬間、大きな声が響く。
なに!? と思いながら身構えると、辺りには先程以上の鉄の臭い。いや、血の臭いが広がる。
その臭いは強烈で、そのまま、いるにも限界がある。
だが徐々に吐き気が催すがそれを必死に我慢して、辺りの影の中を目を振り絞る。
『近づくなっ!!』
すると、再び大きな声が響き渡る。
その声は、どことなく自身が用いる数少ない理性で本能を押さえつけ、他人を傷つけたくないという優しさと欲望を押さえつける苦しみに包まれていると思った。
でないと、あんな言葉が出てこないはずだろうし、必死になる必要もない。
「もしかして……オニヒメさん?」
そして、あの声を聞き続けて僕はあることが頭の中に過った。
聞き覚えのある声に、あのどことなく凛々しく優し気なシャルロット・オニヒメさんの姿がふと過った。
もしそうなのなら、彼女の顔を見なければいけないような気がした。
本当に必要なのかわからない。もしかしたら、同情かもしれないけれども必要なのならば、決めなければいけない。
「オニヒメさん!」
「!! 逃げて!! 逃げてください!!」
僕が大きな声で返答すると、オニヒメさんは必死そうな声音で返事を返してくる。
返事の声音から、彼女は今現在、本当にギリギリな場面にいると感じられた。抑えているのが精一杯。今こうして抑えて声を上げることが精一杯なのだろう。
でなければ、こうして、誰かを助けようと必死そうな声を上げる必要はない。
「どこに、どこにいるんですか!」
オニヒメさんの容体が心配になる。
先ほどの悲し気な表情が頭の中で映り、我ながら似合わない、冷静さが欠けた大きな声を上げながら近くにある壁のような扉を容赦なく開ける。
「っ!!」
すると、強く広がる血と腐った肉の臭い。
額をその臭いで、一瞬だけ歪ませたが、すぐに調子を戻し、部屋の中を見つめる。
ほんの少しの光が僕の視界を慣れさせ、部屋の中が一体、どうなっているか分からせてくれる。
部屋の中は、見るにも耐えないほどの血肉が散らばっており、その中心には月夜に輝く白い肌。血は紅に変わり、美しい姿だと思ってしまう一面、オニヒメさんお口もから流れる涎と赤い血。
額から延びる角も赤い血に勝ると劣らずほどの深紅に染まり、その瞳も赤く血走っていた。
これが、鬼。
そんな彼女の周りにあるのは独特な形をした剣。確か、KATANAとでも言っただろうか。
そのようなものが畳に突き刺さり、刃にはこの血肉を切った凶器なのだろうか。赤い跡がたくさんついていた。
「な、なんで来たの……?」
「なんでって、分かりません」
もし、来たことに理由があるのなら明確な物はない。
ただ僕自身に似ていたと思ったからだ。それ以上それ以下のものは無い。
それが来た理由にならないのだろうか。
「なら、早く去れ!」
「無理です!」
大きく声を上げるオニヒメさんに僕は即座に拒否の言葉を吐く。
即刻拒否、と言うやつだ。
だが僕がそんな事を言っても現状が変わることはなく、ふーっ、ふーっ、と獣のように荒い息を吐きながら血走ったオニヒメさんの赤い瞳は僕のことを見つめる。
「な、なんで、去らないんですか?」
「逆になんで去った方がいいんですか?」
僕はほんの少しでも余計なことをしてしまうと自分が付けている首は吹き飛びそうな感覚に募られるが、我慢して勇気を出して血塗れな部屋に足を踏み入れる。
部屋に入った瞬間、むせかえるような血の臭いが僕の鼻腔を包むが、そんな事は関係ない。足を踏み入れたのなら、もうその足は前に進むことしかない。後ずさることは許可されない。
「じゃないと、じゃないと………
「!!」
じゅる、と涎をすする音を鳴らしながら、目に見えぬ程の速さで近くに刺してあったKATANAを抜くと、僕に目掛けて飛んでくる。
咄嗟の行動に僕が防御の態勢を取れていないと、
ガキンッ、
KATANAの刃がぶつかる音が鳴った。
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