第6話 きゃー! エッチ!

 後ろにへと振り向くと、半裸の状態のプルターニュさんがいた。


「な、何しているんですか!?」


 そう言いながら僕はすぐさま、プルターニュさんを見ない様に彼女がいる方と逆の方向へと顔を向ける。


「何をしているって、見て分かりませんか?」


「見て分かりませんかって、何で服を脱いでいるんですか!?」


「それは、洗う為ですが………」


「で、でしたら少しは人目を庇ってください!」


「?」


 僕はそのように言うが、プルターニュさんはその手を止める事は無く、服を着崩し肌と布が擦り合う音が水のせせらぎと共に僕の耳の中にへと入りこんでくる。


「なんで、目を背けているのか分からないのかよく分かりませんが、貴方も服を脱がないんですか?」


「ぬ、脱ぎませんよ!?」


「え、でも、汚れているではありませんか」


「ぐっ」


 確かに僕の着ている服は汚れているし、正直の所、身体も綺麗にした気分もある。

 だが、だが! 僕がここで脱いでしまえばどこか終わりな気分がある!


「で、でしたら、僕は少し離れた所で、洗いますね」


「駄目ですよ。いつ、魔獣や賊が襲うのか分からないんですよ?」


「ぐっ」


 全くと言ってもっともな事。

 だが駄目なんだ。駄目なんだよ。ここで僕が脱いでしまったら………。


「で、でしたら僕は後で………」


「それでは、残り時間少なくなってしまのでは?」


「の、残り時間ですか!?」


「えぇ、移動時間が減ってしまえば、残念ながら野宿確定ですよ?」


「い、良いんじゃないですか!? それでも!?」


「そうですか」


 あ、やっと、諦めてくれた。

 心の中で安堵の息を吐き、僕は近くにある草むらに入ろうとした瞬間、


「ですが、非効率的なのは変わりませんから服を脱いでください」


「ふぁっ!?」


 彼女はそんな事を言った。


「ぬ、脱げ、ですか?!」


「えぇ、駄目ですか?」


「駄目ですよ!? それにプルターニュさんは服を着ていないじゃないですか!?」


「む、それは確かに盲点でしたね………では近くの草で隠しましょう」


「え?」


 プルターニュさんがそう言うと、がさがさと何やら不穏な音を鳴らす。

 その状況に僕はごくり、と唾を飲む。

 一体、何をしているのか気になってしょうがないが、振り向いてしまえば彼女の柔肌を見る羽目になる。それだけは駄目だ。僕の尊厳が許さない。


「どうしましたか? 早く脱いでください」


「ちょ、ちょっとぉ!?」


 僕がうんうん、と鳴きながら考えているとプルターニュさんは背後からその姿を現し、僕の着ていると服を追剥よろしく、引っぺがそうとする。


「む、強情ですね。早く脱いでください」


「わ、分かり、ブッ!」


 ほんの少しでも抵抗しない方がいいかなと思い、諦めプルターニュさんの方を見ると彼女は何一つ着ていなかった。

 秘所を隠していた葉っぱ一枚除き。


「ちょ、なんて格好しているんですか!?」


 さすがにその姿に驚いた僕は大声を上げて目を逸らす。


「む、そんな事を良いから早く脱いでください」


「ま、待って!? 脱ぐ、脱ぐから! 服! 服、着て! 服着て!?」


 その状態は駄目だから! 漏れるから!

 そんな言葉を必死に飲み込みながらも僕は必死に、目を逸らす。

 プルターニュさんの隠れていた豊満な胸が揺れる度に、秘所を隠す小さな葉っぱ上下に揺れるから本当に危ない。


 だがそんなことを考えてみてもプルターニュさんの追剥行動はエスカレートする一方。どっかの書物で読んだ『よいではないか』とやらに少し似ているのが、被害者側が凄く無理にしているのだけはよくわかった。


「は、離してくれませんか?」


「何言っているんですか? 貴方が服を脱がないと私も離すものを離せなくなりますよ」


 一体、何をだ!?


「で、ですけど、僕一人で脱げますので安心してください………」


「………ですが、心配ですね」


「な、何がでしょうか?」


「魔獣とかに襲われたらどうするんですか?」


「うーん」


 何度目だろうか、その言葉は?


「で、でしたら近くで………」


「………」


「着替えますので………」


「………」


「あのぅ?」


 何で沈黙を貫いているのでしょうか?

 そんな、人を疑うかのような視線で僕のことを見ても変わらないんですが………。


「一つ質問してもよろしいでしょうか?」


「な、何ですか?」


「なんで、そこまで抵抗するんですか?」


「え、なんで僕が怒られているみたいになっているの?」


「良いですから抵抗せず、さっさと脱いでください!」


「この人に羞恥心は無いのか?!」


 あぁ、もう、更に力が強くなった!

 プルターニュさんが僕の衣服を引っ張る力をさらに強めると、僕の服からはみしみしと嫌な音が聞こえてくる。

 僕が生きてきた経験上、この音が鳴ると碌な事が起こらないと言っている。


「なんで脱がないんですか!?」


「それは、貴方が大変な状況から目を背けるためです!」


「何言っているんですか! これ以上、最適解は無いでしょう!」


「貴方、自身のことをアマゾネスかなんかと勘違いされているのでは!?」


「違います! 数学学者です!」


「あーっ!!」


 そうして僕から衣服を剥がされ、というか身包みを剥がれ水の潺が流れる中、僕は河原で代の女性に無理やり脱がされた初体験に少々、悲しみを覚えた。

 色んな意味で………。

 

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