第2話 解放
勇者PTから追い出された僕は静かで暗い森をただ一人で歩いていた。
とぼとぼと歩くその歩は、どこか失望や絶望などと言った感触があったような気がした。
「〜〜!!」
口の中から漏れる嗚咽に、体を震わせ……、
「良かった〜〜!!」
安堵の言葉を漏らした。
「やっと、追い出してくれたよ。いや〜、疲れた疲れた」
体をポキポキ鳴らしながら、先ほどまでの疲れがなかったかのように僕は軽い足取りで暗い森を進んだ。
先ほどまでの暗かった雰囲気がまるでウソかのように、元気で気楽な足取りが僕の雰囲気を一気に変える。
それにしても容赦無く
持てるはずもない荷物の量を無理やり持たせたり、呪い付きのアイテムを無理やり鑑定させたり、みんな疲れているのに、僕だけアイテムの買い出しに行かされるし……本当に嫌な場所だった。
そう考えると追放宣言はあまりにも嬉しいものであり、体が軽くなるもの。一言で言うのなら、肩の荷が降りたと言うことだろうか?
勇者に蹴られた所の痛みなんて関係ないかのように感じてしまうほどだよ全く……、
「ふぅ」
それしても一番、あのパーティで危険だったの僕だったのかもしれないから。
僕はそんなことを思いながら自身の腕にへと目を向けると、僕の腕の上に文字の数々が浮かび上がる。
【鑑定】B+
↳【鑑識眼】A
【調合】A
↳【薬草調合】A+
僕の腕の上に浮かび上がった文字はそのようなものが浮かび上がっており、半ば溜息に近い物が出る。
鑑定士では基本的なものを当たり前のように持っているスキルに安堵と焦燥感に包まれる。
【
だがその文字を見るまでは、
「これが本当にバレなくて良かった」
人形師……パペティア。その能力は人を操る力。相手の意図や考え、思想、道理、人権、そのような物を全て取り上げ相手の人間、存在を
それが僕に与えられた本当の力。
もしあの強欲で、異性に対して色目をよく使うあの勇者は、このような力を知っていたら真っ先に欲しがるかと思うし、僕の仕事が増える。どうせ、あの男のことなんてすぐに分かってしまう。僕にこの力を使わせた挙句、自身だけ楽しんで僕に雑用とか押し付けるつもりでもあったんだろう。
けど、問屋はそう簡単に卸させるわけにはいかない。
僕がパーティを追放された今、そのような、問題は何一つ無くなった。
それにあのパーティには僕以外の【鑑定】持ちの人なんていないから、自身の成長具合やスキルの内容などを詳しく知れないだろう。
………………そう考えると、少しだけ心残りがある。
あのパーティに置いてきた幼馴染。パーティ追放前に彼女と喧嘩してしまって、結局、仲直りできずにこのような状況になってしまった。
これ以上は何をしても意味が無いと自覚をしていながらも、僕は心残りのことを考えてしまう。
「大丈夫かな?」
ふと口から漏れたそのような言葉に僕は彼女の顔を思い出す。
「けど、勇者のこと、好きそうだったし………………別にいいか」
だがそのような不安要素も正直言うとどうでもよかった。
好きな男に惚れている女性の邪魔をするほど、僕の心は廃れてはいない。ただ人のことを恋している所でも呆れ悲しみ喜ぶだけだから、僕には関係ないとけじめをつける様に僕は自身の手を眺め続ける。
それにしても、今後どうしたものか。
今後生きていくにも、勇者パーティ追放のレッテルはいち早く報道されるだろうし嫌なことに変な風潮をされてもおかしくはない。
そのため、僕のこの名前は少々、邪魔な気がしてきた。
顔形を変えることはできないけど、名前だけならどうだろうか?
個体名、物や存在に与えられた名前。人が生まれる時に最初に貰う恩恵。
確かにこれなら変えてしまえば、本質も徐々に変わりつつなると考えると………………いい考えではないかな? 姿かたちが一緒であれど名前を変えてしまえばこっちのもの。
それに僕のことなんて覚えている人少ないだろうし、名前の一つや二つ変えてしまえばばれない。
「よし、名前は………今日から『ユラ・ヘクトパスカル』で行こう」
そしていとも簡単に投げ捨てたかつての名前、リトル・アルスター改めユラ・ヘクトパスカルとして生きて行こう。
そうすれば、誰にもバレないまま、平和な毎日が過ごせるし、僕のこの【人形師】の力だって一体、なんなのか、分かるかもしれない。まずは何かを知るにはまずは己から、こんなどう見ても非人道的な力を貰ったとしてもどうにかして使い方はあるはずだ。
だから、僕はこの力はひた隠しながらうまく使える方法探してみるぞ~!
ま、本音は何もすることないからこんなことをする以外、無いんだけどね?
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