第25話:王冠の行方
こんな所でノンビリしてる暇なんてないのに。
早く城へ行って、レオンに真相を話さなければ。
そして。
何とかしてレオンを王座につけなければ。
そう思って何度か別荘からの脱出を試みるが、何れも母に見つかってしまった。
「アンジェ。フランク様に会いたいのはわかるけど、焦らないで」
「お母さん。わたし……わたし」
「もうすぐお母さんになるんだから、ゆったりした気分でいなさい。果報は寝て待て。よ」
そんな悠長な!
「お城へ行かなきゃ。行かせて」
「駄目よ。まだ、混乱が落ち着いていないみたいなの。何かあったら大変なんだから」
オレは諭されながら、泣いて過ごした。
◆
数日後。
「アンジェリカ!」
「……フランク?」
懐かしいその声を聞いて、オレは驚いた。
「会いたかったよ。アンジェリカ!」
「わたしもだよ。フランク」
「子供が出来たんだって?」
「うん。こんな時に、ごめんなさい……」
うっかり泣いてしまう。
最近、妙に簡単に涙が出てくる。
「何で謝るんだい? 凄く嬉しいよ」
「フランク……」
「一人で寂しい思いをさせたみたいだね。ごめん。アンジェリカ」
「わたし、お城へ行かなきゃ……連れて行ってくれる?」
「何で……城へ?」
「輝石を、何とかしなきゃ」
本物と偽物を交換出来れば一番なのだが、てっとり早くあれが偽物だと分からせるのが一番だろう。
「! その事を誰から聞いたの?」
フランクはオレというかマルスの暗示の事も、あの石が偽物だという事も知っている。
「マルスだよ」
「アイツと、いつ出会ったんだ?!」
思いのほかフランクは強い口調で尋ねてきた。
「あなたと会う前に、コインを返して貰ったんだ」
「……幸運の、女神のコイン、か!」
流石にフランクは察しが良かった。
オレは事あるごとに女神のコインの話をしていたし、これで辻褄が合うだろう。
「わたしが彼にあげたの」
「そう……でも、どうして君がスラム街の花屋敷なんかにいたんだい?」
「アルフィに、連れていかれて……」
「ああ、そういう事か。わかった。すぐに城へ行こう」
「ありがとう」
こうしてオレはフランクと共に城へ行くことになった。
「レオンは、どうしてるの?」
「忙しくしているけど、君のことを気にかけていたよ」
「ね。レオン、王様になれるでしょう? フランク」
輝石が偽物だと分かれば、大丈夫だろう?
「それは……わからない」
フランクの声は、どこまでも沈んでいた。
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