第25話:王冠の行方




 こんな所でノンビリしてる暇なんてないのに。

 早く城へ行って、レオンに真相を話さなければ。


 そして。

 何とかしてレオンを王座につけなければ。


 そう思って何度か別荘からの脱出を試みるが、何れも母に見つかってしまった。


「アンジェ。フランク様に会いたいのはわかるけど、焦らないで」

「お母さん。わたし……わたし」

「もうすぐお母さんになるんだから、ゆったりした気分でいなさい。果報は寝て待て。よ」


 そんな悠長な!


「お城へ行かなきゃ。行かせて」

「駄目よ。まだ、混乱が落ち着いていないみたいなの。何かあったら大変なんだから」


 オレは諭されながら、泣いて過ごした。







 数日後。


「アンジェリカ!」

「……フランク?」


 懐かしいその声を聞いて、オレは驚いた。


「会いたかったよ。アンジェリカ!」

「わたしもだよ。フランク」

「子供が出来たんだって?」

「うん。こんな時に、ごめんなさい……」


 うっかり泣いてしまう。

 最近、妙に簡単に涙が出てくる。


「何で謝るんだい? 凄く嬉しいよ」

「フランク……」

「一人で寂しい思いをさせたみたいだね。ごめん。アンジェリカ」

「わたし、お城へ行かなきゃ……連れて行ってくれる?」

「何で……城へ?」

「輝石を、何とかしなきゃ」


 本物と偽物を交換出来れば一番なのだが、てっとり早くあれが偽物だと分からせるのが一番だろう。


「! その事を誰から聞いたの?」


 フランクはオレというかマルスの暗示の事も、あの石が偽物だという事も知っている。


「マルスだよ」

「アイツと、いつ出会ったんだ?!」


 思いのほかフランクは強い口調で尋ねてきた。


「あなたと会う前に、コインを返して貰ったんだ」

「……幸運の、女神のコイン、か!」


 流石にフランクは察しが良かった。

 オレは事あるごとに女神のコインの話をしていたし、これで辻褄が合うだろう。


「わたしが彼にあげたの」

「そう……でも、どうして君がスラム街の花屋敷なんかにいたんだい?」

「アルフィに、連れていかれて……」

「ああ、そういう事か。わかった。すぐに城へ行こう」

「ありがとう」


 こうしてオレはフランクと共に城へ行くことになった。


「レオンは、どうしてるの?」

「忙しくしているけど、君のことを気にかけていたよ」

「ね。レオン、王様になれるでしょう? フランク」


 輝石が偽物だと分かれば、大丈夫だろう?


「それは……わからない」


 フランクの声は、どこまでも沈んでいた。



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