第24話:真の王
なるべく隠しておきたかったが、家族にはすぐに知られてしまった。
というのも月経の世話が暫くなかったからだ。
お腹の中の子がフランクとの子だという事も、両親は承知していた。
フランクが、万が一の事を考慮して事前に両親に伝えていたらしい。
何ともまあ、有難い事だった。
「おめでとう。アンジェ」
「ありがとう……」
という訳で、城の中も混乱している所だろうが、オレもまた混乱していた。
ゴウル家は一応、王子側で。
一応、というのも覇権争いに参加できる程、身分が高くなかったからだ。
「アンジェの静養にもなるし。しばらく別荘へ行こう」
父がそう宣言し、ゴウル家は満場一致で別荘へ移動する事になった。
移動中の馬車は辛かったが、着いた先はのんびりしていて国が大混乱しているとは思えないほどに長閑だった。
農村地帯らしく、気候は温暖なので、今年は豊作だったらしい。
新鮮な野菜を振舞われて、ゴウル家は平和だった。
そんな矢先に、訃報が届く。
「王子の右腕だったマルスという人物が真の王で、謀反人に殺され、すぐに崩御したそうだ」
ついに、オレが死んだ。
父はあえてジン・ベイスの名を伏せてくれた。
……って、え?
「真の……王?」
「ああ、彼の持っていた輝石が光ったらしい」
「……」
だってアレは暗示で。
仲間の誰もが知っている筈。
何で本物の輝石だという事になっているんだ?
そもそも、輝石なんて本当にあるんだろうか?
王に相応しい者の手の中でだけ光る石……だなんてメチャクチャ胡散臭いし、今までの王は直系の王子が王になっているのだから意味ないのでは?
レオンだって『王の子ではないのでは』――という根も葉もない噂さえなければ、輝石がなくとも普通に王になっていたんだし、そうなると輝石の存在そのものが王家にとって不必要な物だと思うのだが……。
「そんなに心配しなくてもフランク様はご無事だよ。アンジェ」
フランクが無事で一安心だが、それよりも。
「レオンは? どうなったの?」
心配なのは王冠の行方だ。
「今はマルス王の葬儀を取り仕切っているそうだ。しばらく摂政を務めるらしい」
「摂政って……そんな」
馬鹿な!!
あ……普通の石だからか。
オレがハッタリかましたからか!!
「お父さん。城へ行きたい。今すぐに!」
「駄目だよ。体調が悪いだろう?」
「そんなの関係ない。わたし……行かなきゃ……っ……」
こんな時に、吐き気が。
「ほら、無理するんじゃない。フランク様には私から手紙を書いておくから。お前は安心して寝てなさい」
「お父さん……」
「お前に何かあったら皆が悲しむんだ。いいから、落ち着くまで寝ていなさい」
こんな時に普段は甘い父は、厳しい父へと変貌した。
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