第23話:こんな時に!




 ついにジン・ベイス達の謀反が起こって、騎士団は真っ二つに割れた。

 キラが来る頻度も激減したが、何とか顔を出してくれた日があった。


「あら、どうしたの。寝てた?」


 ベッドの中で惰眠を貪っていたオレに、キラが問いかける。


「……今、落ち着いてるんだ?」

「そうよ。表面上はね」

「そっか……うっ」


 急にこみあげてきて、口元を押さえる。


「大丈夫? アンジェ」


 キラは背中をさすってくれた。


「ね。アンジェ、あなた生理来てる?」

「ごめん……誰にも言わないで」

「何でよ。相手はフランクでしょ?」


 キラにはフランクとの事を話していた。


「今、大変な時なの知ってるから……」

「何言ってるの。大変なのは貴女の方でしょ?」

「いいから。黙ってて。お願い」

「……わかったわ。安静にしてるのよ。すぐに解決するから」

「うん……」

「あんたってば本当に何でもかんでも我慢するんだから。そんなんだから心配なのよ」

「ごめん。キラ」

「おめでとう。アンジェ」

「ありがとう……」


 こんな時に妊娠するなんて。

 オレが死にそうな。こんな時に。


「うっ……こんな大事な時なのに……!」


 うっかりこみ上げてきた悲しみや悔しさが、あっという間に決壊してキラの腕の中で号泣してしまった。


「こんな時だからこそ、よ。大丈夫、上手くいくわ。本当よ?」


 泣きじゃくるアンジェリカを見たのは初めてだったキラは内心驚きつつ、慰めるように背中をさすった。



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