第21話:恋人
両親にフランクと付き合ってみる事にした……と報告すると、手放しで喜んでくれた。
フランクは思った以上に、とても優しかった。
最初こそ友達のような感じで安心していたが、やはり友達のままという訳にはいかないようで。
海に案内してくれたフランクは、砂浜でさんざん楽しませてくれた後、手を握ってきた。
「キスしてもいい?」
アルフレドもそうだったが、水辺だと皆、積極的になるのだろうか?
断りをいれられて、仕方なく頷く。
目が見えないのが幸いだった。
女としているのだ……と思い描けば、そう抵抗もなかった。
「怖かった?」
低い声で聞かれて、がっかりしたが、思ったよりは良かった。
「ううん。平気みたい」
「そう……良かった」
フランクは、そう言ってまたキスしてきた。
◆
そんな事をしている間に城では不穏な事態に直面していた。
レオンの父である王が崩御してしまったのだ。
国を挙げての葬儀が行われながらも、水面下では謀反とそれに対する準備が整えられていっている筈だった。
「アンジェリカ。私は王子側についているんだ。近々、争い事に巻き込まれると思う」
厳戒態勢の敷かれつつある、城下町。
先日、案内されたアベルの店の隅でオレとフランクは珈琲を飲んでいた。
「回避出来ないの?」
「無理だろうね」
「そう……」
「ジン・ベイス卿の謀反の話が持ち上がっている。王子側につくとしたら、おそらく生きて帰るのは難しいだろう」
「でも、あなたはレオンを助けるのでしょう?」
ここでジン・ベイス側につくと言われても困るのだが。
「勿論だよ。でも……君の事が気がかりで」
フランクは何やら悩んでいる様子だった。
「フランク。何をそんなに心配しているの?」
「この際だから正直に言うよ。君に求婚したのは凄く綺麗な子だと噂に聞いて、それなら両親が納得するだろうって思ったからなんだ。うちの両親は物凄い面食いでね」
「そ、そうなんだ」
流石は色男の家族。
意外な告白だった。
「君がこんなに魅力的だとは思わなくて……結婚出来ないまま君を残して、このまま死んでしまうのかと思うと辛いし悲しいんだ。こんな事になるなんて思わなかったよ……」
フランクは悲壮感漂う声を出した。
「……何かわたしに出来る事ある?」
「無理は言わないけど、一つだけ」
予想していた事だが、仕方ない。
その日、オレは、思いきってフランクの要望通りに愛し合う事にした。
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