第9話:初めての
それ以来、レオンはオレから目を離さない事に決めたらしい。
アルフレド並みにオレに張り付いてきた。
休日、キラに誘われてピクニックに行った時も、アルフレドと一緒についてきてしまった。
「ねぇ。レオンってアンジェの事、好きなんじゃないかしら?」
「そんな事ある訳ないよ」
オレは苦笑する。
「そうかしら~」
「キラ目当てなんじゃないの?」
「んな訳あるかっての!」
「わかんないでしょ。将来は王妃様か~」
「もう、からかわないで!」
将来、レオンとキラは相当いい感じになるのだから、そういう事もあるだろう。
オレは、そういう風に考えて笑った。
◆
「あの二人、仲良しだなぁ」
アルフレドは実に華やかな女子たちを見て微笑ましく思った。
「アル。私が口出す事ではないが、アンジェとは上手く行ってるのか?」
「ああ、勿論。僕たちも相当仲良しだよ」
アルフレドは頬を染めた。
「キスした事ある?」
レオンは唐突に聞いた。
「え?」
「恋人らしい事、出来てるかい?」
「それは、まだだけど」
「そうか……」
「そういうレオは、どうなんだい? いい人いるの?」
「親から何件か見合いの話は来てるよ」
「そういえば、レオは乱暴な子が好みだったね」
「乱暴って何だよ?」
「あ。元気のいい子だった」
「アル。お前……」
「図星だろ?」
レオンは顔を赤らめた。
◆
「ねえ、ちょっと二人共ー」
キラがレオンとアルフレドを呼ぶ。
「何?」
「どうした?」
二人がやってくると、キラが明るい声を出した。
「あそこに泉があるらしいの。行ってみない?」
「レフの泉か……」
レオンは思案気な声をだした。
「時間あるし行ってみようか。アンジェ、立てる?」
アルフレドがオレを立たせると手を引いてくれた。
「レフの泉の水は、冷たくて美味しいらしいよ。楽しみだね」
「うん」
アルフレドの導きで、水の匂いがする場所へとやってくる。
「わー。綺麗!」
キラの弾んだ声がした。
「本当だ。凄いな」
レオンの感心した声も聞こえる。
「わっ、やだ。何してんの!」
「気持ちいいだろー?」
「ちょっと、やめて……もう、こうしてやる!」
パシャパシャと水の音がした。
キラとレオンは何やら遊んでいるらしい。
「アンジェ。触ってみて」
アルフレドはオレの腕を支えながら、しゃがみこむ。
木靴を履いていたので気付かなかったが、どうやら泉の浅瀬であるらしい。
手のひらに柔らかい水の感触が感じられた。
「わ……冷たい」
思ったよりも冷える。
「ね。まだ泳ぐのには早いかな」
「アルフィは泳げる?」
「ううん、泳げない。でも、いつかアンジェと泳ぎたいなぁ」
「わたし、大丈夫かな」
「僕がついてるから大丈夫だよ」
「……うん」
アルフレドの肩を抱く手に力が入った。
と思ったら、唇に柔らかい感触が。
これは……もしや。
「ごめん。嫌だった?」
思わず身震いしたオレに、慌てた様子でアルフレドは肩をさすってくる。
「……わたし達、結婚するんだね」
「もうすぐだよ」
アルフレドの言葉に、身体の震えが止まらない。
「大丈夫かな。わたし……」
「何が不安なの?」
「何もかも……全部。これから、どうしていいか、わからな……」
何やら熱いものが頬を流れた。
「アンジェ……」
アルフレドはオレを抱きしめてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます