第10話:困った




 多少のトラブルがありつつも、数年の時が流れ、十四歳になったオレはレオン達と共に卒業する事になった。


 卒業式の当日。

 最も成績優秀な者に与えられる盾というものをオレは貰っていた。

 半分以上、詐欺としか言いようがなかったが、有り難く頂いておいた。


 答辞は王子であるレオンが引き受けてくれて、大層、立派な言葉を並べ立てて歴史に残る当時だったといえるだろう。


「アンジェ。遊びに行くからねー」


 キラはそう言って手を握ってきた。


「わたしも遊びに行っていい?」

「いいわよー。事前に知らせてくれたら、迎えにいくからね!」


 キラは女性では珍しい事に騎士団に入団していた。

 男子たちも騎士団へと進むだろうし、レオンは王家を担うものとしての教育が始まるだろう。

 そして女子たちは、キラのような例は珍しいが、それぞれの事情で社交界デビューしたり、専用の職についたり、はたまた結婚したりと忙しい。

 オレはというと結婚するまで家でのんびりする事にした。

 目が不自由だと社交界という訳にはいかないし、職に就くことも難しかった。

 何よりアルフレドが結婚の日取りを決め始めているので、その準備で忙しい。


 そんな最中、キラと共にレオンが訪れた。

 キラが席を外している最中、レオンは小声で語りかけてくる。


「例の事、まだアルに話してないの?」


 レオンは相当気にしているようだった。


「はい」

「言い辛いのならば、私から言っておこうか?」

「……」

「いつまでも黙っている訳にはいかないだろう? もうすぐ結婚するんだし」

「でも……」

「結婚した後で知ったら、アルが傷つくよ?」


 うーん、困った。

 結局オレはレオンに任せる事にした。



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