第5話:面倒くさい
スラム街に行ったら、過去の自分と出会えるだろうか。
そんな事を考えながら、キラ達女子何人かと共に中庭の芝生の上で昼食を取る事になった。
今日は晴れているのか暖かい。
「はい、アンジェ。お茶よ」
「ありがとう。キラ」
キラは相変わらずの世話好きだった。
他の子たちは、オレの扱いに困っているらしく積極的に話しかけてきたりはしなかった。
「学校に通うの初めてなんですって? 疲れたでしょう?」
「少しだけ。でも、大丈夫だよ」
「ねぇ、アンジェってアルフレドの婚約者なんですって?」
「うん。そうみたい」
「いつ結婚するとかいう話って出てるの?」
「わたし達が成人したら結婚するってアルフィは言ってるけど……」
「そっか。まだまだよねー」
この国の成人は十五歳で、あと三年しかない。
思わず盛大に溜息をついてしまう。
「何よ。辛気臭い」
「わたしなんかでいいのかなって」
「何言ってるの。アンジェったら可愛いんだから自信持ちなさい」
可愛いって言われても……。
目が見えないので、どんな感じなのかわからなかったし、正直言って複雑だった。
今まで美しいと感じた女性は一人だけ。
オレにとって大切な意味合いを持つあの人――幸運の女神は今、どうしているのだろうか?
「それから、アンジェ。スカート気をつけて」
「?」
「あんまり足広げると見えちゃうわ」
「……見える?」
よく分からないながらも足を閉じる。
「そっか。んっとね、下着が見えそうなのよ。男子たちが、チラチラこっち見てるわ。いやらしい目でね」
「そうなんだ? ……気をつけるね」
……ああ、面倒くさい。夢なら早く覚めてくれ。
オレは、また溜息をついた。
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