第4話:何故、同級生?
まともに喋れるようになった為、近くの学校へと通うことになった。
「制服、よく似合ってるわよ。アンジェ」
「ありがとう。お母さん」
「少し丈が短いんじゃないかな? ユーリ」
「何言ってるの、ジェフ。これくらいが可愛いのよ」
何だか足がスースーするのを除けば、滑らかな肌触りの快適な服だった。
貴族たちが集うアウルム学園という学校は広大な敷地を有していた。
正直、スラムで育ったオレにとっては未知なる異世界のような所だ。
馬車で送迎するのは当たり前で。
確か、レオンも幼少期はここに通っていた……というのを前に聞いた事がある。
自分からは余り話したがらなかったが。
「アンジェ。ついたよ。僕に掴まって」
「ありがとう」
何故か送迎の馬車をアルフレドが手配してくれて、一緒に登校である。
「僕と同じクラスにして貰ったから、困った事があれば僕に相談するんだよ?」
「う、うん」
王族に近い貴族ともなれば、そんな裏工作出来るのか……。
なんて単純に感心した。
「おはようございます。アルフレド様」
「おはよう」
「そちらの方は?」
「僕の婚約者だよ」
まるで王族並の扱いを受けている様子のアルフレドは、足早に歩く。
従って、オレも早足で歩く羽目になった。
「やあ、アル。……その子は?」
一人の少年が話しかけてきた。
「おはよう、レオ。前に話してた婚約者だよー」
アルフレドの口調からして、相当親しい間柄なんだろう。
「これは、これは。はじめまして。レオン・アウルムと申します」
甲高い声で自己紹介した相手は、あろう事か我が主にして親友のレオンその人だった。
「レオン・アウルム……さ、ま?」
え? 同姓同名の別人か? どういう事だ?
「アンジェリカ。レオン王子だよ」
アルフレドが耳打ちしてくる。
「し……失礼しました。アンジェリカ・ゴウルと申します。お見知りおきを」
「宜しくね。アンジェリカ」
「こちらこそ宜しくお願い致します」
「僕がいない時はレオを頼るといいよ。アンジェ」
「う、うん……」
「君、全く見えないの?」
若いレオンが問う。
「はい。ご迷惑をおかけします」
「いいんだよ。何かあったら言ってね」
ポンと肩に手の感触が残った。
「はい」
オレは肩を押さえる。
(レオンを王座につける為に、オレは死んだのに……どうして)
大混乱の中、教師がやってくる。
「今日から勉学を共にするゴウルだ。仲良くするように」
「アンジェリカ・ゴウルです。どうぞ宜しくお願い致します」
「ゴウルは生まれつき目が見えないんだそうだ。皆、手助けしてあげて欲しい」
「はーい」
「ゴウルの席は、メナスの隣だ」
こうしてアルフレドの手を借りて自分に宛てがわれた席につくと、右隣の席の子が話しかけてきた。
「私、キラ・ダレルって言うの。よろしくー」
「え……」
キラ・ダレルは、かつての仲間だった。
「ごめんなさい。アンジェリカ・ゴウルです。こちらこそ宜しく」
「髪サラサラね。触ってもいい?」
「いいけど……」
相変わらず、ぐいぐいくるキラ。
「ねぇ。アンジェって呼んでいい? 私の事はキラでいいからね」
「う、うん」
「アンジェ。教科書読んであげましょうか?」
「いいの?」
「勿論よ。わからない事があったら言ってね」
「ありがとう。キラ」
有難いやら、居た堪れないやらで大変だった。
初めて受けた授業というのが歴史で。
「地上に大地が生まれた時に輝石も誕生しました。その輝石は城で大切に保管されています」
教師の言葉を聞きながら、オレはどうしたものかと考えていた。
――もしかしたら、ここは夢ではなく現実で。
――この世のどこかに、もう一人のオレがいるのか?
――そもそも輝石を盗もうとした時に、オレとレオンは出会ったのだが。
――ここにいるオレは一体……?
その答えは、遂に見つからなかった。
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