九章 「300年前の出来事」

 それは300年ほど前、ある女性に起きたことによるものが原因だった。   


 その女性の名前は智子(ともこ)という。

 18歳で、明るい性格の子だった。 

 両親は数年前に事故で亡くなり、1人で暮らしていた。

 裕福とは言えないけど、しっかり生活していた。

 希望に溢れていた。

 しかし、女性はある日突然子供を身ごもったまま、自殺をした。

 原因は、村八分にあったからだ。

 しかし、彼女は何か村のルールを破ったわけではない。

 絶大な美貌を持ったために、他の人がそれを疎ましく思ったのだ。 

 ただそれだけで、ひどい仕打ちを受けた。

 夫となる人は、村八分に自分もあうのが怖くて、すぐに別の村に1人で逃げた。

 きっともともと彼女を本気で愛していなかったのだろう。

 彼女は自分を主張するタイプではなかった。

 だから、抵抗することができなかったんだと思う。

 1人ずっと泣きながら耐えていた。

 そうしているうちに体だけじゃなく心も蝕まれていった。

 そして、あるとき急に自殺を思い立った。 

 自殺はいつも突然起こると思われている。でも実はそうではない。つもりつもって起こるのだ。

 でも、彼女は誰にも心配されなかった。

 死んでからも誰も同情もされなかった。

 まだ自殺する人が少ない時代だ。

 そして、自殺をすることはこの村で禁忌とされていたからだ。

 しかも、まだ生まれていない子供まで巻き添えにしたのだ。

 村の人たちはそれが許せなかった。 

 彼女の遺体は磔にされた。

 そして、彼女の遺体に呪いをかけて、今後何度生まれ変わってもその度に苦しんで自殺するようにした。 


 それから、彼女の生まれ変わりは、生まれてきては自殺を繰り返していった。

 自殺は、彼女が自殺した年齢になると行われるようになっていた。

 呪いは強力でその効果はずっと消えることはなかった。

 つまり、生まれ変わった人は、生まれてきたときから死ぬ運命が決まっている。 

 そこで、幽霊は私の方を真剣な顔をして見た。


「杏奈ちゃんは、その彼女の生まれ変わりなんだ」

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