第15話 『持つべき友は幼なじみ』~優香と香織…真一について②
週明け月曜日、香織は北川と再会後初めての登校となった。体調も北川と再会してから調子が良かった。疲れも出すことはなかったようだ。
一方、真一と優香は森岡が間に入ってなんとか仲直りが少しはできたようだったが、真一は優香とはこれまでのような『いつもの光景』はあまりないと思っていたので、あまり自分の意見を優香に話さなくなっていた。それは森岡という彼氏がいるからこそ、これからの優香は森岡中心にいるべきだと、かねてから真一が考えていた。それを優香は気づいていた。
優香(やっぱり真一くんは、私とあまり話さなくなってる。私のせいやなぁ…)
放課後、香織は真一を専門棟の人気のない場所に呼び出していた。
香織「堀川くん」
真一「あぁ…」
香織「今回はホンマにお世話になりました。ホンマにありがとう」
真一「いえいえ、春休み中、暇やったし…。それより北川と出会えたか?」
香織「うん。おかげさんで…」
真一「そうか…、よかった」
香織「それでね…」
真一「うん」
香織「克ちゃんと付き合うことになったんや…」
真一「そうか。よかったなぁ(笑)」
香織「『色々と心配させたくなかったから』…って、克ちゃん、私に気を使ってたみたいやった。あ、それと、克ちゃんが進路を京都で就職することを考えてるって…」
真一「そうやったんや…」
香織「堀川くんが克ちゃんを探してくれたんやから、何よりもそれが(収穫)大きかったわ。おかげで克ちゃんと付き合うことにもなったし…、ホンマに何とお礼言うたらいいか…」
真一「いえいえ、オレは山下さんに言われたことをしただけやから、今回は山下さん自ら動いたことなんやから…」
香織「なぁ、堀川くん」
真一「何?」
香織「ゆうちゃんとは相変わらずなん?」
真一「先週末、森岡が間入って『許してやってほしい』って…。オレ何もしてへん(してない)のやけど…」
香織「そうなんや…」
真一「オレのことはいいから、山下さんは北川のこと考えてやんなよ(あげてよ)(笑)」
香織「うん…」
真一はその後、工業系職員室へ出向き、鈴木先生に香織の件で報告にあがった。
真一「鈴木先生、ようやく一件落着のようですな」
鈴木先生「あぁ、よかったなぁ」
真一「ええ。色々と配慮いただきまして、すんませんでした」
鈴木先生「まぁ、しゃあない(仕方がない)な…」
一方その頃、香織は優香を教室に呼び出していた。森岡が用事あって早く帰ったこともあり、優香は香織の呼び出しに応じた。教室には優香と香織の2人きりである。
優香「香織ちゃん、話って?」
香織「…あのな、実は私、春休み前からある人に2度も助けてもらったんや」
優香「…そうなんや」
香織「春休み前の土曜日に、私、電車の中で体調悪くしてしまって、たまたまとなりに座ってた男の人が助けてくれたんや」
優香「そうやったんや…」
香織「救急車で病院に運ばれて、お母さんが病院に来るまで、ずっと付き添ってくれたんや」
優香「そうかぁ…」
香織「それで病院から帰って来て、学校に来て中休みの時に、私、廊下で出会い頭に男子とぶつかってしまって、よく見たら、電車で救護したくれた人やったんや。それが堀川くんやった」
優香「…………」
香織「それで後で聞いたんや。堀川くんがゆうちゃんと幼なじみやって…」
優香「…………」
香織「めっちゃ優しかったよ、堀川くん。…それで私、あえて相談しようと堀川くんに話したら、相談に乗ってくれて…。下心とかそういったこと、全くなかったし、真面目に話を聞いてくれた。ええ加減な対応やなかった」
優香「そうかぁ…」
香織「人探しやったんやけど、見つけてくれたんや」
優香「そうなんや…」
香織「嬉しかった。ホンマに嬉しかった。堀川くんが探してくれた人、実は私の初恋の人なんや。ホンマは私も一緒に探す予定やったんやけど、体調を崩してしまって、入院してたんや。それで堀川くん一人で私のために探してきてくれたんや」
優香「そうやったんや…」
香織「ホンマに優しいなぁ、堀川くん」
優香「うん…」
香織「私、堀川くんのおかげでその人と再会できて、おまけに付き合うことになって、私、堀川くんに何てお礼を言うたらええか…。さっき堀川くんと話したんや。そしたら『オレはあくまでも言われたことをしただけや』って言われて…」
優香「そうかぁ…」
香織「私、彼氏がいなかったら、堀川くんとなら付き合ってもいいかな…って思ったくらいや」
優香「…………」
香織「ゆうちゃん、堀川くんと何があったの?」
優香「えっ…、何もないよ…」
香織「ウソや。ひょっとしてゆうちゃん、堀川くんにカマかけてたん? 誰かに唆されたん?」
優香「…………」
香織「私、今回のことでわかったんやけど、堀川くん、ホンマに真っ直ぐな男子なんやなぁ。駆け引きみたいなこと、あんまり好きやないんやない(好きではないんじゃない)?」
優香「…………」
香織「ゆうちゃんなら、堀川くんのこと一番よく知ってるんやから、私がこんなこと言わなくてもわかってるやろ? なのに、なんでカマかけたん?」
優香「…………」
香織「私の相談に乗ってもらってた時、堀川くん、めっちゃ集中して考えてた。なんかゆうちゃんのことを忘れようとしてたんかも…。私にはそう見えた」
優香「…………」
香織「確かに『幼なじみ』やから、堀川くん、もしゆうちゃんに告白してフラれたら、今までみたいな仲になれなくなるのが嫌やから、あえて告白とかしてないんかもしれんけど…。でもゆうちゃん、堀川くんのこと一番よく知っていながらカマかけるなんて、堀川くん辛かったんやと思う。だから、堀川くんは余計に自分の気持ちを言わんようになっちゃったんじゃない? 私、そういうふうに見えたよ。ゆうちゃんが堀川くんのこと一番知っていて、他の男子と付き合ってるってなったら、堀川くんの立場がないやんか❗」
優香「…………」
香織「堀川くんがかわいそうや」
優香「…………」
香織「それでも、ゆうちゃんは『幼なじみ』なん? それ、ただ裏切ってるだけやんか❗」
優香「…………(下をうつむいている)」
香織「堀川くん曰く『不器用やから』って言ってた。堀川くんのそういったこともゆうちゃん知ってるんでしょ? 一般的な恋の駆け引きを堀川くんに当てはめられるか? 堀川くんでは難しいって、ゆうちゃんやったらわかってたんと違うの?」
優香「…………」
香織「ゆうちゃんはどう思ってるか知らんけど、他の男子と付き合っておいて、堀川くんと『幼なじみ』の間柄を壊したくないって言うのはおかしいで。そんなん、ゆうちゃんのただのわがままやんか❗」
優香「…………」
優香は香織に痛いところをつかれて、ずっとうつむいている。
香織「堀川くんの立場で考えてあげてよ。このままでは、堀川くんがダメになってしまうよ。自分の気持ちを全く言わなくなってしまう。そうなったら、ゆうちゃんのせいやからね。…偉そうなこと言うてゴメン。でも堀川くん見てたら、辛くて、もう見てられなくて…」
優香「香織ちゃん…」
香織「…良い幼なじみだね……」
優香「香織ちゃん…」
香織は泣きながら、教室を出ていった。
優香は一人教室に残り、放心状態だった。
優香は香織に言われたことがグサッと心に突き刺さった。しばらく自席で考え込んでいた。
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