第14話 北川と香織…北川の告白

香織と北川は途中町の香織の自宅に戻り、また昔話に花を咲かせながら夕食をとっていた。


順番に風呂に入った後、香織と北川は香織の部屋で話し込んでいた。


北川「なぁ香織」

香織「何?」

北川「体調は昔と変わらんのか?」

香織「そうやなぁ…。良いときと悪いときと交互に来てる感じかな…」

北川「そうか…」

香織「どうしたん?」

北川「香織、ただでさえ体が弱いのに、ひょっとしてオレのことで余計に体調悪くなってるのか?」

香織「そんなことないよ」

北川「だったら、なんで体調が悪くなる間隔が早くなってるんだ?」

香織「体が大人に成長している途中だからかな…」

北川「そうかぁ…。ひょっとしてオレのことを心配して香織の体の調子が悪くなってるのでは…と思ってて…」

香織「大丈夫や」

北川「心配させてゴメン」

香織「ううん、大丈夫やから…。でも克ちゃん、心細かったら私に連絡してね。私、ポケベル持ってるから…。ポケベル知ってる?」

北川「知ってる。香織、ポケベル持ってるのか?」

香織「うん(笑) これで、どんだけ離れてても、文通だけではないから…」

北川「わかった…」


その後北川は香織と話を続け、日付が変わる頃に座敷に移動し就寝した。香織もベッドに入りすぐに寝た。しゃべり疲れたようだ。


翌日、香織と北川は途中町の街をブラブラ歩いてちょっとした『デート』を楽しんだ。


北川「香織、疲れてないか?」

香織「うん、大丈夫。ありがとう」


夕方、香織の自宅に戻り、順番に風呂に入ってから夕食をとる。夕食後、香織と北川はまた話し込んでいた。日付が変わる頃まで話し続けていた。どんだけ話しても、どんだけ時間があっても足りないくらい話していた。


そして翌日の日曜日、朝食を終えた香織と北川は香織の自宅を出る。


北川「おばさん、お世話になりました。ありがとうございました」

香織母「いいえ、こちらこそ、香織の話に付き合わせてゴメンね」

北川「いえいえ、とんでもないです」

香織母「また来てね。道中長いから、気をつけて…」

北川「はい。ありがとうございます」

香織「福町まで電車で送ってくるね」

香織母「わかった」

北川「それじゃあ失礼します」

香織母「さよなら」



北川は香織と共に途中駅に向かう。

途中駅から福町行きの電車に乗って福町に向かった。福町駅で山陰本線方面の電車に乗り換える。電車が行った後だったので、次の電車の時間は1時間後だった。

待っている間、2人はホームの待合室で話す。待合室の中は、北川と香織しかいない。そして北川はある覚悟を決めていた。



北川「香織、ホンマに世話になったなぁ」

香織「ううん、克ちゃんやから大丈夫。お母さんだって大歓迎だったでしょ(笑)」

北川「確かに…(笑)」

香織「また会えるかな…?」

北川「あぁ。あのな香織…」

香織「なぁに?」

北川「実はというとオレ、今まで香織と距離を置く形にしていたんや」

香織「なんで?」

北川「香織が小学校の時から体が弱かったのを知っていて、松江に引っ越してから心配かけさせたくなかったんや。文通をしていたら、心のどこかで気持ちも和らぐんやないか…と思ったんや」

香織「そうやったんや…」

北川「けど、それがかえって心配かけさせてしまって…。ホンマにゴメンな」

香織「ううん、克ちゃんのホントの気持ちがわかったし、克ちゃんが正直に教えてくれたから嬉しいよ」

北川「それでな、香織…」

香織「どうしたん、克ちゃん?」

北川「………あのな…」

香織「……うん」

北川「今回、山口丹こっちに来て香織とゆっくり話ができたから、話してたら何か昔を思い出してなぁ…」

香織「うん」

北川「オレ、文通してたのは、香織やったからしてたんや」

香織「うん…」

北川「だからオレ、今まで味わった辛い経験があったから余計に思ってるんやけど…」

香織「うん…」

北川「オレ、香織が小学校の時から好きや」

香織「えっ…」

北川「オレ、香織が好きや」

香織「克ちゃん…」

北川「だから、しばらく遠距離になるけど、来年の春、京都に戻ろうかと…」

香織「克ちゃん、 この前言ってたことはホンマなん?」

北川「まぁ、ハッキリした場所とかは就職先が決まってからやないとわからんけどな…」

香織「…そっかぁ」

北川「それでな…」

香織「うん…」

北川「オレ、やっぱり香織のことが忘れられんのや。だからオレ、離ればなれになるのがもう嫌なんや」

香織「克ちゃん…」

北川「香織、どういう形になるかはこれからになってみないとわからんけど、これからはオレと特別な間柄になってほしいし、付き合ってほしい…」

香織「克ちゃん…」

北川「…アカンか…」


香織が涙ぐむ。


香織「克ちゃん…、私もあの時(小学校の時)からずっとずっと好きや。克ちゃんから告白されるなんて…、私…私…、めっちゃ嬉しい…」

北川「香織…、それじゃあ…」

香織「うん…、これからもよろしくお願いします(笑)」

北川「香織…ありがとう」

香織「克ちゃん…ありがとう」


2人きりの待合室で北川と香織は強く抱き合った。そしてお互いを見つめて、唇を重ねた。


それから、北川が乗る電車がホームに入ってきた。



香織「克ちゃん…」

北川「ん?」

香織「帰らんとって(帰らないで)❗」

北川「なんや、もう彼女になったから甘えてるんか?(笑)」

香織「長い間、山口丹駅とか途中町で待ってたんだよ。やっと出会えて、帰る間際に告白して、もう克ちゃんが帰っちゃうんだよ。そりゃあ甘えたいよ…」

北川「そうか…(苦笑)」

香織「克ちゃん…帰らんとって❗」

北川「帰ったら、ポケベルに入れるし、手紙書くから…。それと、また近いうちに途中町戻るようにするから、また連絡する」

香織「克ちゃん…」

北川「しばらくは遠距離(恋愛)になるなぁ…」

香織「うん…。克ちゃん…」

北川「ん?」

香織「大好き❗」

北川「あぁ。オレも香織が大好きや」

香織「うん(笑)」

北川「じゃあ、電車が発車するから…」

香織「うん…」

北川「出雲に着いたら電話するわ。家にいるか?」

香織「うん、今日はずっと家にいるよ」

北川「わかった。じゃあ、オレのことは心配しなくていいからな」

香織「わかった。これからもっとよろしくね(笑)」

北川「おう。香織もな…」

香織「うん(笑)」

北川「それじゃあ…」

香織「電話待ってるね」

北川「おう」



そして電車は福町駅を発車し、香織はホームで電車が見えなくなるまで見送った。



その夜、香織の自宅の電話が鳴った。北川からだった。


香織「もしもし…」

北川「香織…」

香織「克ちゃん」

北川「ありがとう、世話になったなぁ…」

香織「ううん、こちらこそ遠いところありがとう」

北川「いま出雲に着いた」

香織「そうかぁ…。お疲れ様」

北川「香織、ホンマにありがとう。嬉しかった」

香織「うん。克ちゃん、私も克ちゃんがずっとそばにいてくれたから嬉しかったよ。山口丹駅で待ち続けた甲斐があったよ(笑)」

北川「そうか…。寝坊してしまって悪かった」

香織「ううん、大丈夫。出雲から来てくれたんやから、疲れるのも無理はないで…」


その後も2人の話が尽きなかった。まるでこれまでの空白の時間を取り戻すかのように…。

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