第14話ゆうべはお楽しみでしたね!メラメラメラメラメラメラゾオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオマアアアアアアアアアアアアアア!!

「お!人生初魔法にしてはすげえじゃん!」


「そっか?あたいもなかなかやるもんでしょ?」


「そやねえ。女戦士が移動魔法を使えると本職のわいらの魔法力の温存にもなるしなあー」


「これならあの野郎も余裕で倒せるんじゃないか?」


「ごほん!油断するな。奴はとてつもない力を持っているぞ」


「あ?おい。『新入り』がなんか偉そうなんやけど。気のせいかなあ」


「まあまあ、女賢者の言う通りだぜ!けど、ここはあたしの人生初魔法に免じてだぜ!な!」


「せやなあ。まあ、『新入り』。頭だけでも下げとき」


「まあ…。魔王も形だけでいいから」


「ごほん!(いかんいかん。ここは大人に。大人の対応をするのだ。手下どものことを考えれば…)これでいいか?」


(ぺこり)


「うーん。いまいち誠意が…」


 そんなやり取りをしている中、どうやら魔王が言ったように『とてつもない力を持つもの』の姿を発見する勇者たち(魔王もパーティーに加わったので)。宿屋から出てくる『とてつもない力を持つもの』に宿屋の主人が大きな声で声をかけている。


「ゆうべはお楽しみでしたね!」


 それを聞いて怒りが爆発する女賢者と女戦士。


「お、た、の、し、み、だとおおおおおおおおおおお!!!」


「あの野郎ぉぉぉぉぉぉぉ!『ハーレム』だ!『ハーレム』ってやつだぜ!あれは!」


「いいのう…」


「あ!?」


「いや、独り言」


 そして怒りまくりの女賢者と女戦士がそっこーで『とてつもない力を持つもの』に絡む。


「おい!てめえ!」


「あれ?どちらさんでしたっけ?」


「てっめえええええええええええええ!あたいらの顔を忘れたってのかあああああ!」


 そこに僧侶や勇者、魔王も加わる。


「さすがの貴様も余のことは覚えているだろう?」


「あ、あの有名な弱い魔王さんですね」


「よかったなあ。魔王有名人じゃん」


「ごほん!それではこの男二人は覚えておるか?」


「うーん。ごめん。覚えてないっす」


 さすがにカチンと来る勇者。


「ほおー、このお方は随分と人を怒らせるのが上手だなあ」


「いえいえ、僕は別に誰かを怒らせる気なんかサラサラないんですが…。あ!思い出した!すいません!思い出しました!あの、前に宿屋で部屋がお隣で石鹸をお借りした方ですよね!?」


 完全に舐められているどころか、『とてつもない力を持つもの』の記憶にも残ってない勇者たち。のんびり屋の僧侶と覚えてくれていた魔王以外の勇者、女戦士、女賢者はぶち切れる。ちなみに魔王の怒りもそこそこ上がっている。


「で。今日は何の用事でしょうか?僕もこの後、『アポ』がありますんで」


「(おい!『アポ』ってなんだ?)」


「(さ、さあ。戦闘の約束とかじゃね?)」


「(ごほん!何か特別な魔法や能力のことかもしれぬ)」


「(うるせー!新入りは黙ってろ!つーか、てめえが聞いてこい!)」


 自分が大人になるのだと言い聞かせながら『とてつもない力を持つもの』に尋ねる魔王。


「ごほん!貴様の言う『アポ』とはなんのことだ?」


「ああ、『アポ』ね。うーん、説明が面倒だから簡単に言うと『ハーレム』の予定です!」


「てっめええええええええ!殺す!」


 女賢者が怒りの炎系最大の魔法を繰り出す。


「メラメラメラメラメラメラゾオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオマアアアアアアアアアアアアアア!!」


 女賢者の両腕にファイヤードラゴンの化身のような炎が。そしてその両腕を頭上に掲げ、手のひらを握り、地面と水平に両腕をおろしクロスさせる。二つのファイヤードラゴンの化身が合体し、大きなファイヤードラゴンと化した炎が女賢者のクロスした両腕から放たれる。


 そしてものすごいスピードで炎が『とてつもない力を持つもの』に向かってその威力を増しながら飛んでいく。


「やったか!?」


 今までなら「ずがーん」という音がして相手に直撃するはず。が、その音がしない。


「ん?」


 よく見ると『とてつもない力を持つもの』は「メラメラメラメラメラメラゾオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオマアアアアアアアアアアアアアア」を受け止めたはずであるが全然無傷である。


「うそーーーーん!」


「あれ?どゆこと?」


「今、確かに『メラメラメラメラメラメラゾオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオマアアアアアアアアアアアアアア』はあの野郎をとらえたはず…」


「おい!てっめえ!今なにしやがった!」


「はい?僕ですか?」


「当たり前だろ!てめえ以外誰がいる!」


「え、あなた方と有名な魔王さんがいるじゃないですか」


 完全に舐められている勇者たち。魔王が冷静に分析する。


「恐らくやつの能力である『チート』と呼ばれるものだろう。おい、貴様。そうであろう」


「よく分かりましたねえー。正解でーす。僕は『思ったことをそのまま使える』能力を授かりましたので。今は右手ですべての攻撃を『無効化』する能力を使いましたー」


 おいおい。それは反則だろう。しかし、それが『チート』。


「舐めんじゃねえええええええええええ!」


 人生初魔法を唱えたばかりの女戦士が本職であるものすごく強い剣で『とてつもない力を持つもの』に向かう。そして「それ、その辺の魔王の手下のそこそこ強いやつでも一撃で倒しちゃうでしょう」を超えるような一撃を繰り出す。

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