否世界転生～決着は後でつけましょう。その前にご都合主義の『チート』『無双』『俺つえええ』を強力して倒しましょ～

第10話『ぱふんぱふん』

「ん？ここは…」

「ふん。気が付いたか。貴様ら全員死んだのだ。一瞬で全滅したのだ。覚えておらぬのか？まあ、余が先ほど蘇生の魔法で貴様らを生き返らせてやったのだがな」

「てめえ！何ふざけたこといってんだよ！」

「せやせや！眠らせる魔法とかで眠らせたんちゃうかい？」

「勇者よ。貴様もそう思うか？」

「いや、一体何があったんだ？」

「貴様らを全滅させたのはあの『とてつもない力を持つもの』ではない」

「何ぃ？だったら誰がやったっつーんだよ！ああ？」

「余が試しに『さまよっている鎧』一人に貴様らの相手をさせた。貴様ら全員一撃でくたばりおったぞ。おそらく貴様らは今、最初の冒険を始めた頃と同じぐらい弱い。数字で言うなら『レベルいち』だ」

「なにいいい？『レベルいち』だとおおおお！！てめええ！まじかあ？」

「余が今、嘘を言って何の意味がある」

「しかし。例えそうだとしてあの『チート』能力を使うものはどうした？」

「ああ、せやせや。あの人おらんやん。どこ行ったん？」

「あの人じゃねえよ！あのやろおお！『レベルいち』だぜ！？あんなに手間暇かけて時間もかけて強くなったのに『レベルいち』だぜえ？もうやめようぜ。めんどくせえよ」

「だなあ。なんかテンションが一気に駄々落ちだぜ。魔王のおっさんよお。てめえは強いままだろ？もうてめえとその側近であの野郎の相手してやって。あたしらはもう普通に生活するから。それでいいんじゃね？別にあの野郎がてめえを倒してくれてもこの世界は平和になるわけじゃん？だったらそれもありじゃね？」

「うーん。勇者の立場としてはそれを言っちゃあってところはあるかな。でも魔王が倒されても世界は平和を取り戻すし、魔王があの野郎を倒せば、まあ、気が向いたらまたやるってことで。それでいいかな？」

「貴様ら…。余は貴様らを少しは買っておったがそれは思い過ごしだったようだな」

「いや、一回倒したって『事実』は残ってるし。なあ」

「だぜ！その事実は消えねえからな！」

「何を言っておる。余は負けた覚えなどないぞ」

「なーに言ってやがる。みんなあー。言ってたよなあ。こいつ。勇者の最後の一撃で倒れていたとか、それを受け入れるとか、覚悟は出来ているとか。なあ？」

「言うてた言うてた」

「あれはだな。実はもう一回変身を残していてだな。その方が貴様らの希望からの絶望の様が見れるだろう。それを楽しみにしておったのだ」

「てめえさあー。あの状況でそんな余裕ぶっこくはずねえだろが！」

「せやせや。で。あの人はどこ行ったん？」

「何か『ハーレム』の言葉を連呼しながら消えていった。そしてこうも言っておった。『とりあえず『無双』して『俺つえええ』を愉しんできまーす』と。そして『『ハーレム』があれば『ざまあ』はいらないかなあ』ともな」

「じゃあ、いいんじゃね？強くてモテモテで満足なんだろ？」

「別に危害を加えてくるわけでもないしね」

「貴様ら…。余の手下どもはかなりあのものに殺されおった。『ハーレム』のために強さを見せつけないといけないと抜かしながらだ」

「え？それをお前は黙って見てたの？」

「余は真っ先に倒された」

「え？そうなの？」

「そうだ。幸い、余の手下には蘇生の魔法を使うものが多くいる。そのものが気を利かせて余を蘇らせたのだ」

「それで？」

「貴様らに言うのは癪だが今の余だけではとてもあのものには勝てぬ」

「手下使えばいいじゃん」

「余と余の手下どもが全員束になっても勝てぬだろう」

「じゃあ魔王が倒されて、世界平和でめでたしじゃね？」

「そやなあ。別に『ハーレム』でもいいんじゃないの？みんなに『ぱふんぱふん』してもらえるとかやろ？そんなのは勇者もやってたし」

「え！？なにい？てめえ！勇者ぁ！お前、あの最初の酒場で他にも強そうな戦士はたくさんいたのに何で『女』戦士を選んだか不思議に思ってたが！そういうことかあああああ！」

「え？いやいや違うから！見た時に『あ！この人一番強そう』って思ったんです！」

「僧侶は戦闘も考えたら男なのは分かるぜ。でも女賢者はもともと女魔法使いだろ？まあ、変な三角関係とかならないようにってバランス考えての編成と思ってたが…。勇者…、お前さあ…。『ぱふんぱふん』だと…？」

「いや！俺の話を聞いてくれ！あれは僧侶が強引に誘うから！ほら、男同士の付き合いも大事だろ？」

「いやいや、わしを悪者にすんなや。お前から誘ってきたときも結構あったで」

「てめえらあああああああ」

「ごほん！内輪揉めはあとにしてくれぬか。余が言いたいことはだな…」

「うるせえ！てめえはすっこんでろ！あの『チート』能力の『ハーレム』モテモテ野郎は別に問題ないだろ！？今はこいつらの話してんだよ！今までずーーーーっと協力してやってきたと思ってたのが『ぱふんぱふん』だぜ？てめえも『二千年前ムッツリ』だろが！だから『男』は信用できねえんだよ！」

「ごほん！一度だけ言おう。余が頭を下げる。頼む。貴様らの力が必要だ。このままではこの世界は滅んでしまうであろう」

　丁寧に勇者たちに頭を下げる魔王。プライドの塊がそれらをすべて捨て、頭を下げる。それを見た勇者たち。

「うるせえ！てめえはすっこんでろつってんだろが！」

「だぜ！これはうちらの信頼関係の問題なんだからな！それにあの『ハーレム』野郎がいくら『ぱふんぱふん』しようがそれで満足するなら問題ないだろうが！」

「あのものはいずれ女賢者や女戦士、貴様にも『ぱふんぱふん』させるぞ。それはもういくら抵抗しようが拒めないだろう。それだけ『とてつもない力』を持っておるのだからな」

　それを聞き、黙り込む女戦士と女賢者。

「あの野郎があたしで『ぱふんぱふん』だとおおおお…」

「ありえねえわ…。タイプじゃねえし」

「でもそれを拒むのは無理だぞ」

　考え込む二人。プライドの塊である魔王のお辞儀よりそっちを重く考える女賢者と女戦士。そして魔王の立場も分かる勇者と僧侶。複雑である。