～『とてつもない力を持つもの』が現れるまでの数週間～

　あの『神』と名乗る美しい女性の言葉で一時休戦した魔王と勇者たち。

「ところでお前さあ、『チート』て知ってる？」

「余も知らん。まあ、魔法や能力の類ではないか？」

「『無双』もそうなのか？」

「おそらくそうだろう」

「『俺つえええ』は『俺は強い』ってことか？」

「単純に考えればそうであろうが、それは能力とは言わないだろう。単なる戯言であろう。ただ意味もなくあの女がその言葉を使うとは余も思えない。何かの能力を意味するのであろう」

「まあ、そうだろうな。だが『ハーレム』でモテモテとはなんだ？」

「単純に考えれば人間どもの欲望の一つである一夫多妻のようなものではないか。ただあの女が意味もなく使う言葉だとは思えん。何かあるのだろう」

「だな…。あと、『ざまあ』で気分爽快とも言ってたぞ」

「ふむ。回復魔法や能力の類ではないか。恐らく貴様ら以上の蘇生魔法や回復能力の類と考えた方がいいだろう」

「なるほど…」

　それから『とてつもない力を持つもの』を迎え撃つために勇者たちと魔王は準備の日々を送った。

「おい」

「はい！何でございましょう？魔王様」

「スライムどもをまとめているものに伝えろ。あの『銀色』の泡っぽいスライムを出来るだけ召集するのだ」

「はい！え？ま、まさか…。魔王様は…」

「ふん。忌々しいがあの勇者どもを短期間でさらに今より強くさせるにはそれが一番手っ取り早いだろう」

「しかし…。殺されるために我々の同士を集めることは…」

「貴様、余を誰だと思っておる。何度でも蘇生させることは容易いものだ」

「は！分かりました！すぐに伝えます！」

「あ、あと。その、なんだ。その『銀色』の泡っぽいスライムどもにくれぐれも『逃げるな』と伝えとくようにな」

「はい！かしこまりました！」

「あ、あと。金色のゴーレムにも召集をかけておけ。それとさりげなく『宝箱』を落とすように部下どもに徹底させろ」

「はい！」

　この魔王はなかなか賢いようである。

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