否世界転生~決着は後でつけましょう。その前にご都合主義の『チート』『無双』『俺つえええ』を強力して倒しましょ~
工藤千尋(一八九三~一九六二 仏)
第1話『チート』ってなんだ?
勇者が魔王に切りかかる。伝説の剣には攻撃力が二倍になる魔法がかけられている。
「きかぬわ!ちょこざいな!」
魔王は力も強い。生命力もすごい。攻撃力も防御力もこの世界で断トツ。強力な魔法も使えるし、反則みたいな能力もたくさん使える。それでも勇者たちはこれまで幾度となくモンスターたちと戦い、経験値を積み重ね、強くなってきた。魔王直属の反則みたいな強さを持ったモンスターも倒した。そして連戦で魔王と対決中。
「大丈夫か!今、体力を回復する魔法をかけてやるぞ!」
僧侶がそう言いながら回復呪文を唱える。しかし呪文は効果が発揮しない。
「ふははははは。貴様の呪文は厄介だからな。先に封じさせてもらった」
「何!」
しかし焼け石にお湯どころか熱湯だろうと思いつつ、『やくそう』を使う僧侶。
「耐えてくれ!呪文の効果が切れるまでなんとか耐えてくれ!」
「まかしときな!」
女戦士が同じく攻撃力が二倍になり、かつ、二回攻撃出来て、その上、与えたダメージの半分ぐらいの体力が回復する剣で魔王を攻撃する。
「やりおるな。しかしこいつはどうだ?」
魔王が強力な眠りの魔法を唱える。
「くっ…。ね、眠気が…。ぐーぐー」
魔法で眠ってしまう女戦士。そして魔王の反則のような痛恨の二回攻撃で即死する女勇者。
「くそう!魔法がダメならあの『葉っぱ』を使ってくれ!」
「すまん!さっきの側近どもを倒す時に全部使い果たしてもうないわ!」
「あたしに任せな!」
女賢者が蘇生の呪文を唱える。魔王に殺された女勇者が生き返る。ただ体力全快ではない。
「ふっ。無駄なことを」
再度、反則のような痛恨の二回攻撃を繰り出す魔王。それを勇者が立ちふさがって自ら魔王の攻撃を受ける。
「大丈夫か!何かばってんだよ!あの『葉っぱ』はもうないんだぜ!お前だけは死ぬことは許されないんだぜ!」
「はあはあ…。大丈夫だ…。俺は死なねえ…」
そんな攻防を繰り返しながらなんとか勇者たちは魔王を倒すが反則のような強さを持った魔王は変身してさらに強くなる。変身した魔王もなんとか倒すが変身してさらに強くなる魔王。
「この姿を見せたのは何千年ぶりだろう…。お前たちはよくやった。これが余の最終形態だ。いくぞ!」
「みんな!この世界の平和まであと少しだ!何とか頑張るんだ!」
お互いボロボロになりながら最後の死闘を繰り広げる。反則のような強さを持った魔王を協力して攻撃する勇者たち。殺されては蘇生。呪文を唱えるのに必要な魔力も残り少ない。そして魔王もかなり追い込まれていた。最後の戦いに相応しい壮絶な戦い。最後の力を振り絞る勇者たち。そして魔王。
「これで終わりだ!!」
最後の力を振り絞って剣を魔王に向かって振り下ろす勇者。魔王も覚悟を決める。
その瞬間。その場にいた勇者たちも魔王も体が動かなくなる。
「なんだ!?これは?」
「これも魔王の力か?」
「いや、そうではない。余も動けない。何か不思議な力がこの場を支配しているようだ。不思議だ…」
何が起こっているのか分からないが冷静に言う魔王。そこに空から光と共に美しい女性が。神なのか?その美しい女性がゆっくりと地上に降り立ち口を開いた。
「今、あなたたちの動きを私が止めました。私はこの世界の神です。今から私が言うことをよく聞いてください。近い将来、この世界に巨大な力を持つものが現れます。そのものは『とてつもない力を持つもの』です。今のあなた方のどちらが生き残ってもそのものに倒されるでしょう。そのものは『ご都合主義』な『チート』と『無双』と『俺つえええ』を使います。おまけに『ハーレム』でモテモテです。『ざまあ』で気分爽快です。争っている時ではありません。あなた方は協力してこの世界を守らなければなりません。その『とてつもない力を持つもの』を倒した後に今の続きをすればよろしいのではないでしょうか。あなた方の検討を天より見守っております」
そう言って美しい『神』と名乗る女はまた空に浮かんでいき、そして消えた。体の自由が戻る勇者たちと魔王。しかし壮絶な戦いを中断する。
「今のは…?」
「貴様らにも見えていたのか?」
「ああ。お前にも見えていたのか?」
「余にも見えておった。あの言葉が本当なら争っている場合ではないのかもしれぬ」
「てめえ!ここまでやっといてケリつけねえって言うのか!」
「待て。ここは冷静に考えろ。こいつの言う通りだ。『神』と名乗ったあの女が言ってたことが本当なら争ってる場合じゃない。それに続きはいつでも出来る」
「何言ってんだ!こいつは今まで散々この国のみんなを苦しめてきたんだぜ!?『とてつもない力を持つもの』だと?そんなのあたしたちだけで倒せばいい話じゃねえかよ!」
「いや、『神』の言葉だぞ。お前の気持ちも分かる。けど、多分俺たちだけじゃ勝てないのは確実なんだろう…」
「余はどちらでもいいぞ。今なら貴様の一撃で余は倒れるだろう。それもまた受け入れよう。覚悟は出来ている」
「そうだそうだ!やっちまえよ!」
「いや、少し待ってくれ」
そして少しの間考え込む勇者。
「魔王よ。悔しいがお前は強い。とても強い。強かった。そして『神』はお前と俺たちが協力しないと勝てないと言っていた。そんな『とてつもない力を持つもの』を倒すにはお前の力が必要なんだろう」
「何言ってんだよ!こいつと協力しろって言うのか?あたしは無理だぜ」
「こいつを倒すことは今の俺たちならいつでも出来る。そうじゃないか?それとも今倒さないと次は勝てる自信がないのか?」
「な!んなわけねえだろおが!こんな野郎、いつでも倒せるぜ!」
「だったら一時休戦だ。魔王もそれでいいか?」
「この余が貴様らと手を組むだと?片腹痛いわ。と今までの余なら言っておっただろう。しかしこのまま生き恥を晒すのも一興というもの。よかろう。貴様らと手を組んでやろう」
「てめえ!『組んでください』だろうが!?」
「待て待て。こいつはそういうキャラじゃねえのは俺たちが一番わかってるだろ?」
こうして勇者たちと魔王は手を組むこととなった。
神が言った言葉。
「とてつもない力を持つものとは一体?『ご都合主義』の『チート』と『無双』と『俺つえええ』で『ハーレム』で『ざまあ』とは一体なんだ?」
そして魔王との壮絶な戦いから数週間後。その『とてつもない力を持つもの』がこの世界に現れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます