6.病院のベッドって大体、ふかふかで寝やすいよね

 私は今病室に1人で居る。

うーん、少し暇だな……遊びに来たはいいけどコトちゃん、今抜糸の手術中だしなぁ……昨日は最終的にまた夜更かししちゃったし少し眠いかも……


「ふぁーあ……」


 つい大きな欠伸が出てしまう。ちゃんと昨日はおやすみーって言ったのに、少し寝付けなくて……つい趣味に精が出てしまったのだ……流石に夜更かしし過ぎるのは良くないなぁ……うー……なんか欠伸したら、ものすごくねむくなってきた……コトちゃん帰ってくるまで頑張って、おきてないと……


……………………

Side:琴莉


 抜糸が終わって戻ってくると、みうちゃんが病室で待っていた……のだけど、目がとろーんとしててとても眠そうだ。目を擦り頑張って起きようとしてる姿を見て可愛いなぁと思いつつ、あたしは声を掛けた。


「みうちゃん眠そうだねー」

「うん……ちょっとねむい………」

「どうしたのさー?昨日はちゃんと12時過ぎにおやすみーってRaiN来てたっしょー?」

「あのあと、ちょっと寝付けなくて……趣味に精が出ちゃったんです……」

「あーよくあるやつ〜あたしもよくやっちゃうなー」

「なんか、さっきまでは大丈夫だったのになんか一気に眠気のピークがきちゃった感じ……ふぁーあ……」

「あたしもちょっと眠いし一緒に寝る?隣どうぞー?」

「えー、わるいですよぉ……狭くなっちゃうでしょ……?」

「大丈夫だよーみうちゃん小柄だし?お布団暖かいよ?あたしは一緒に寝たいなー」


 掛け布団を捲ってあたしの隣に寝れるスペースを作って見せた。


「でも……うー……じゃあ……お言葉に甘えて……おやすみなさい……、…………すぅ……すぅ……」


 制服の上着を脱ぐと遠慮がちに布団に潜り込んできた。だいぶ眠かったらしくもう寝息を立てている。ふふっ……やっぱり仔犬みたい。最初に会った時もみうちゃんの寝顔見て思ったけどお人形さんみたいで可愛いなぁ。甘い、いい匂いするし……うーん……かわいい……撫でたい……。


「っと、あたしも眠いし寝るかなぁ……でもなんかちょっと緊張して寝れないかも」


 そうは思ったものの、1人で寝てる時よりも安心したらしいあたしはみうちゃんの温かい体温を感じながら微睡みに溶けていった。


……………………

Side:美唄


 んー……すっかり寝ちゃってた……。

目を開けると目の前にコトちゃんの寝顔があった。

ぼんやりと寝惚けたまま思考を巡らせてみる。たしか……コトちゃんに一緒に寝よ?って提案されたんだっけ?それで……、とりあえず起きるかな……

布団から出ようとすると服の袖が優しく掴まれてることに気付いた。何となく外して出る気にもなれずコトちゃんが起きるのを待つことにする。


 息を吸うと柑橘系のさっぱりした香りに女の子特有の甘い香りが混ざった匂いが鼻腔をくすぐる。コトちゃんの匂い……。脳の奥が融かされてしまいそうにクラクラする。躰もじんわり熱くなってドキドキしちゃう……。


「ん……うぅ……?…………おはよぉ……よく寝たぁ……あれ?どうしたの?そんなに、ちょっと狭かった?」


 その声を聞いて私はコトちゃんの胸に顔を埋めていたことに気付き驚く。いい匂いだなーって思ってたら無意識のうちについやっちゃったみたい……。すごく恥ずかしい。顔から火が出そう。私が陸の女王リオレイアだったら火炎ブレスを吐いてる。しかも高出力火炎ブレスチャージブレスの方だ。


「あ、いやぜんぜん狭くはなかったですよ……!?」

「そっかぁーじゃあ、如何して?もしかしてみうちゃんは甘えんぼさんなのかなぁ?」

「なっ……!うぅ……ち、ちがいますっー!」

「えー、あんなに引っ付いて来てたのにー?」

「も……もうっ、からかわないでくださいっ!」

「まぁそれはさておき、あたし達だいぶ寝てたね……もうだいぶ暗いけど何時くらいなんだろ?」

「え、あー……うん?あれっ!?まずくないですか?もう面会時間終わってません!?」


慌てて帰る準備をしようとすると鞄の上にメモが置いてあった。んーと、なになに?



『2人とも姉妹みたいに仲良く熟睡していたようなので起こしませんでしたよー。面会時間についてですが、起きたらナースセンターまで来てくださいね。ごちそうさまでした♪』



「あはは……看護師さんも起こしてくれれば良かったのにねー」

「そうですよね……うーん、怒られちゃうかもですね……ナースセンター行ってこなきゃ……行きたくないなぁ……」


まぁスマホのアラームとか掛けずに寝ちゃった私が悪いし甘んじて受け入れなくちゃね……


「あたしも付いてってあげるよーそもそもあたしが誘ったんだし。」

「ありがとっ……!コトちゃんが来てくれるなら百人力だよぉ……!」


……………………

ナースセンターにて

私とコトちゃんは師長さんに頭を下げていた。


「えっと……琴莉ちゃんのお見舞いに来ていた溟路 美唄です……。面会終了時間忘れて寝ちゃってて、ごめんなさいです……」

「すみません!元々あたしが寝よーって誘ったのであたしも悪かったです!」

「えっ、んっと?2人ともどうしたの???」

「あの……メモを見て来たんですけど……、」

「あー……別に怒るとかじゃないよ?書き方悪かったかも。ビビらせちゃったかな?ごめんね〜?もう外暗いし琴莉ちゃんも明日で退院するから美唄ちゃんが今日都合良かったら病院に泊まっていってもいいよ〜って話したくてねー」


え?んっと?つまり……???


「え、良いんですか!?」

「今回は”特例”で、だけどね。ベッドは簡易ベッドを貸し出しできるから使っていいよーパジャマとかは……どうするかなぁ……制服だもんね……寝にくいかもしれないね……」

「あ、あたしのパジャマまだ残ってるので貸せますよ?兄貴、服はいっぱい持ってきてたので余裕あるんですよねー」


トントン拍子で進む話についていけない、何の話をしているんだろ???

やっと理解が追いつくのは段取りが全て終わってからであった。


「あ……ありがとうございますっ……!」

「いいのよーこっちも良いもの見せてもらったしごちそうさまでしたって感じ。2人とも仲良くて癒されちゃうわー」


私とコトちゃんは顔を見合わせて疑問符を浮かべる。よく分からないけどナースセンターから幸せオーラが漂っている……?


とまぁそんなこんなで私はコトちゃんとお泊まり会ということになったのであった。





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