3.個チャがメインのSNS、帰り際に交換しがちだよね……私は友達が少ないからあまり経験ないけど

〜♪


「そろそろ時間ですね……帰らなきゃ……」


館内放送から蛍の光が流れている。つい話し込んでしまってもうこんな時間だ。正直、帰らなきゃって気持ちにはなるけど入院患者にとってはとても嫌なのでは……?と感じる選曲だ。


「えーもう帰っちゃうの……?」

「そんなに目をうるうるさせてもダメです。お医者さんに怒られちゃいますよ?」


上目遣いでうるうるは反則だよ……危うくナースセンターで泊まれないか交渉して来るところだったよ!コトちゃんは可愛いのでそういう仕草が映える。私が男の子だったら恋に落とされちゃってるかもしれない。


「冗談だよ〜暗くなる前に帰りなよー?もうだいぶ暗いけど……気をつけてね!」

「あ、そうです!RaiN交換しちゃいません?それなら家でもチャットで話せますし!」

「そうだね!交換しとこっか!」


ピッ、ポロン!


私の家族としか繋がってないRaiNの友達欄に初めて本当の友達が追加された。ものすごく嬉しい。そして何故かとても顔が熱い、多分耳まで真っ赤になっちゃってる。なんか照れちゃうな……


「えへへ……ありがとうございますっ!」

「どういたしましてーだよ。じゃまた明日ね!」

「はい!また明日、です!」


私は荷物を持つと外へ向かう。家に帰ったら早速RaiNしちゃおっと!


……………………

Side:琴莉


みうちゃんのRaiNを見た時、あたしは初期アイコンで味気ないなと感じた。そしてみうちゃんの友達欄を見て納得する。


「なるほど……今まで友達があまり居ないって言ってたけどRaiNもまっさらだったのかー」


家族との連絡用としてしか使ってないなら確かにわざわざアイコンの設定を変える必要も無いし仕方ないのかもしれない。そして、みうちゃんのRaiNでの初めての友達になれたいう事実にとても気分が上がってしまう。今までも初めての友達になれたって言う経験はあったとは思うのだけれども、こんなにも嬉しいのはなぜなのだろう?


「学校が新しくなったから、あたしも少しだけ友達ができるか不安があったのかもなー」


それにしても一週間の休養期間かぁ……学校は初日が大事だから友達作りをするにしてはスタートが上手くきれてなくてハンデを背負っている……ただあたしにはみうちゃんが居る、それだけで不安が小さくなっていくのが分かった。あたしどんだけみうちゃんの事好きなんだよと小さく笑う。今日初めて会ったのにもう既に親友と呼べる仲かなと自分の中では思う。


「やっぱり意識が無くなる寸前に聞いたあの安心する声……みうちゃんの声だったんだなぁ……そして、みうちゃんの血があたしの中を流れてるんだよね……」


灯りに手を透かし血潮を見ながら独り言ちる。そしてその独り言が一人きりの部屋に消えると少し淋しくなった。

手持ち無沙汰になったあたしはなんとなくテレビを点けた。ニュースではちょうど通り魔あたしを殺そうとした男の顔写真と名前が表示された所だった。それを見た瞬間、視野が狭苦しくなり息が詰まった。身体の芯が冷たくなり冷や汗が止まらない。くるしい。さっきまで気にならなかったお腹の傷が痛む。嫌……怖い……たすけて……だれか……そんなの、みたくない……


ポロン!


通知音が泣きそうになるあたしを呼ぶ、見るとみうちゃんからのRaiNだった。”みうちゃんから”の通知に少し落ち着きを取り戻したあたしはテレビを消しRaiNを開くのであった。


美唄『今、家に着きました〜!』

コトリ『おかえりなさーい無事で何よりーw』

美唄『RaiNで特に理由もなくお喋りするの初めてでなんて送るか少し悩みました……!』

コトリ『そんなのスタンプ連打とかじゃない?あたしはよくそこから会話始めるー』


そんな会話をしながらあたしは、みうちゃんありがと……と思わず呟くのであった。


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