中は駄目よ
内部の摩擦によるあまりに激しい快感ですずりは正気を失い掛けていたが、辛うじて中に出しては断じてならないと拓に何度も虚ろながらに申し付けたので、顔に出された。抜き去られた拓のオールディーズはすずりの前に湯気立つその雄姿を見せつけ、先端から黄濁した液体を噴出。すずりの顎から額、その先に広がる豊かな頭髪に至るまで夥しく覆った。すずりは数度身体を痙攣させ、熱い迸りを終わらせた柔らかみを帯びた拓を啜った。拓は荒い息をしたまま壁に手を付き、すずりに好きなように吸わせた。
「すごかった」
拓が言った。
「生きてて良かった」
「ベットベトだわ」
すずりが口を離した。
「ちょっとどいて、洗ってくるから」
すずりに跨るようにしていた拓は身体を隣にどさりと横たえ、すずりは自由になった。髪についている。しばらく動きたくなかったが、仕方がない。
バスルームに向かうと、佐田が全裸で席に座り、神妙な顔をして牛乳を注いだコップを眺めていた。
「何してるの?」
「幸せになろうと思って」
佐田がすずりの目を真っ直ぐに見据えて言った。だがすずりの顔面には精液が残っていた。
「何ちゅう顔してんですか」
佐田が呆れて言った。
「顔に出された。悔しい。汚された」
すずりがよろよろとバスルームへ向かっていった。
「でも、かわいいですよ」
佐田がその後ろ姿に声を掛けた。
「ありがとう」
すずりが礼を言った。
◆
「しばらく会えなくなるね」
すっかりくたびれた白バンに乗って、出発するばかりになった佐田と拓をすずりが見送った。三人とも、久し振りに衣類を身に付けて新鮮に思える程だった。すずりは風呂上がりに髪を乾かしたばっかりで、ストレートに下ろしていた。
「とても寂しい」
「すずりさんのお陰で、何だか俺、幸せになれそうな気がしました」
運転席の佐田が正直に言った。
「実際、この数日は最高でした」
「あっそ」
「え、何だか冷たくないですか」
「冷たいよ。あたしは冷たい人間なんだよ」
夜が訪れる前の冷たい風を感じて、すずりは薄いグリーンのマフラーを何重にも首に巻き直した。すずりが背伸びをし、奥の拓に声を掛けた。
「元気でね」
拓は目を落とし、はい、と弱々しく返事をした。
「元気がないなあ!」
「はい!」
拓が大声を出した。
「こいつ、すずりさんの顔に出した事を反省してるんです」
佐田が笑いを堪えて言った。
「洗うの超大変だった。まじで」
「ごめんなさい」
拓が謝った。
「まあいいよ、許す。こう、何と言ったらいいか、プロのお姉さんからの意見としては、小野寺拓君はいい線いってると思うな」
「何がですか?」
拓が聞いた。
「こう、センスがあると言うか、産まれもった何らかの具合がとても良い」
すずりが濁した。
「俺の時と全然反応が違うんだもん。すっごい傷ついた」
佐田が察して言った。
すずりがふふ、と笑って、笑顔をみせた。
「色々あっただろうけど、これからも頑張ってね。拓君、自信を持ってね」
拓は曖昧に頷いた。
「じゃあ、行きますね」
「うん」
すずりが窓口から離れた。
佐田が慎重にアクセルを踏み込み、白バンはしんどそうにエンジンに発破を掛け、排気ガスを出しながら出発していった。拓は窓から振り返り、手を振った。すずりは軽く手を上げて、儚げに振った。その姿は近くで見るすずりの姿よりも、ずっと大きく見えた。
「泣いてんのか?」
佐田が拓に聞いた。
「泣いてない。佐田さんが泣いてるんじゃないですか?」
「泣いてねーよ」
佐田が笑いながら言った。
「でもこう、泣こうと思ったら泣ける感じ」
鼻を軽く啜って佐田が言った。
「僕もです」
拓が同意した。
「泣いた方がいい気がします」
「一人の時に泣くよ」
佐田が軽く言った。
「今は楽しいままでいいんだ」
◆
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