そりゃおかしいよ
佐田が大笑いした。
「家族全員の前でアダルトビデオを再生するって……居た堪れねーわ普通にもう、あはは、腹いたい」
腹を抱えてひいひい笑っている。
今は品出しの時間で、客は少ない。
「家族は何て言ってた?」
肩で息をしながら佐田が聞いた。
「一人で見たり、しなさいって」
「がはははは」
もはや床の上を転げまわりそうな勢いで佐田は笑った。
◆
「で、アダルトビデオはどうだった?」
「すごく、綺麗だった」
拓が作業をしながら答えた。あれから家族が寝静まった後、拓は一人でそれを最後まで観たのだ。
「画質が綺麗なAVは珍しいぞ。みんなダビングしまくってガッビガビだからな。そんで、ヌけたか?」
「ヌけた?って?」
「そりゃお前、シコシコしたかって事を聞いてる訳だよ俺は。使えたかって聞いてんの」
拓は首を傾げた。
拓は現状不能であり、性欲や欲情とは縁遠いところにいる。
「恥ずかしがってんじゃねーよ」
バシッと肩を叩かれて、拓はつんのめった。
佐田はその様子を見て、
「マジか」
と言った。
嘘をついているようにはどうも見えない。
◆
「激烈爆乳! 南の国の痙攣鬼畜揉み!初めての白濁シャワー!」 投稿:耕し侍
僕は、初めてAVというものを観ました。そして、とても感動しました。
南條ほたるという女性の裸体はとても白くて美しく、その肌に黒く長い髪を纏い、実に女神のようでした。男性は身長が高くて肌が浅黒く、ゴツゴツとしたこわばった体つきで、二人が並ぶと、まるで同じ人間と言えども男性と女性の二種類が存在し、その二つは決して同列ではないことを知らしめるようでした。
特に南條さんの胸は大変大きく、乳首は綺麗なピンクでした。タイトル通り、男性が後ろからそれをたくさん揉むのですが、その間うっとりとした表情がとても美しく、胸を打たれました。もしかしたら、後ろ手で軽く縛られていたのもその要因であったのかも知れません。全裸という無防備な状態で、さらに自由を奪われるというシチュエーションはとても訴えかけるものがありました。それも南條さんの裸体がとても美しいからだと思います。
また、横になって男性が上から覆いかぶさる場面も大変美しかったです。南国バカンスの途中でしょうか。窓から光が射して、レースのカーテンが揺れている中で、男女が上下に重なり、とても気持ちよさそうにお互いを見やっているのです。南條さんが上になって、下から見上げるアングルはもはや、女神なのではないかと目を疑うばかりでした。サラサラとした髪が少し南條さんの美しい横顔を覆って、美しい胸にまで至っているのです。頬が上気しピンク色に染まり、見下ろす冷ややかな目とはうらはらに気持ちが良さそうな麗しい声を上げる様子はまさに、美しいという言葉でしか表現ができません。僕にもっと、言葉があればいいのにと、ここまで切実に思った事はありません。それほどまでに、南條さんは美しい舞踏を見せてくれたのです。
ただ残念だったところは、終盤になる頃、南條さんの顔に何かしらの白濁液が掛かり、男性が去る場面があるのですが、僕は意味がよく分かりませんでした。何故男性は、あんなに美しい南條さんの顔に、糊のような白い粘液を掛けたのでしょうか? それはずいぶんな勢いで飛び出したのです。南條さんも嫌そうに顔を背けていましたし、あの粘液は本来違うところに出すものだったのではないのでしょうか? 髪に付いていたし、ネバネバとしてずいぶん取り辛かったんじゃないかと心配してしまいました。というのも、僕はコンビニで今働いていて、ガムを地面に吐かれたものを取り去るにはずいぶんと手間が掛かるのを知っているからです。職業病、と言えるのかも知れませんね。
ともあれ、僕は初めてのエーブイ体験を済ませました。
このような美しいビデオがあるとは、世界はとても広いのだと、改めて感じ思います。職場の先輩によると、AVの数はまさに膨大であり、全てを見通す事は不可能であろうとの事でした。何という事でしょう。僕にはまさに、生きるための理由が出来てしまったのです。
また見た暁には感想を投稿させていただきたいと思います。実はもう一つビデオテープがあるのですが、まだ目を通していないのです。きっとまた、素晴らしい世界が広がるのだと想像するだけで、胸がワクワクします。DJさん、どうかお元気でお過ごしください。それではまた!
「ううーん、何だろうねこれは。耕し侍さん、ずいぶんと変わった内容の文章を送ってきてくれてありがとう。アダルトビデオの感想にしてはとても良く……上手に書けていると思うよ、うん。おっぱいが大きかったんだね。おじさんも南條さんは好きでよく観るよ、うん。おっぱいでかいし、もうハードでズッガンズッガン腰使って男を圧倒する肉弾戦!みたいなおセックスはもう最高だよね。耕し侍さんが観たのはたまたまソフトなやつだったのかな、うん。よかったと思う! 良かったね!
でも、おじさんから忠告は二つあるんだ。聞いてくれよな。
ひとつ、残念なエーブイを観ても泣かないこと。
ふたつ、そのうち顔に出すのが好きになる時がきます。
それくらいかな。
また送ってくれよな!
待ってるぜ。
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