信仰

 なかなか難しいテーマでした。

 意味としてはとても幅広いけれど、ひとつ取り扱いを間違えれば厄介なことになる……そんな言葉。日本に住んでいると、そこまで信仰に触れる機会ってないじゃないですか。もちろん、日常生活の一部になっている文化は横に置いておいても。

 私自身、何かを信仰することってたぶん無くて、神様の存在もあんまりわからないし、大好きな作家やアーティストは居るけれども作品全てを揃えたり、ファンクラブに入会したり、偶像崇拝するほどの巨大な熱は無いんです。だから、信仰って結局はよくわからない! 誤解を恐れずにいえば何かを盲目的に信用したり崇拝する気持ちに出会ったことがないから、そういう気持ちで中途半端な宗教は書けないなーとか、考えてました。


 そんなこんなで色々、悶々とネタ出しをしながら実はもう一方の企画参加も煮詰まっていたりします。実際はそっちのがめちゃめちゃ苦しんでました。先に企画発表されていた「神ひな川」です。結論から申し上げれば、納得の出来るオチが見つからずに不参加という結末……。だって、テーマがハッピーエンドなんですもの。結果的にハッピーエンドとして出来上がった作品もあるけれど、ハッピーエンドを主軸にしたお話って書いたことがない……。基本的に主人公たちには不幸でいてほしい……歪んだ性癖でごめんなさい……。

 まあ、一応頑張ってそれっぽいお話を書いてましたが、筆がどうにも進まず、途中で諦めてました。それが「導きの日」の第一章・空の浮島篇の原型だと思っておいてください。つまり、コレが先述のとある事情ってヤツです。もっとお話の引き出しを増やさないといけないですね。

 そして、ごめんなさいサニーフィールド神父……穏やかな笑顔で銃口は向けないで……罪深き哀れな子羊にどうか慈悲を……!笑



 なので、草食信仰森小説賞のテーマ「信仰」を見たとき、これ自作の中では味付け程度だったけれど「神様」が登場するし、これをもっと主軸としてお話を作っていけばボツだったものをリサイクルできるのでは? と姑息ながらに思いました。

 この世界観では「神様」はちゃんと意思を持って存在するけれど、もはや神様がいることが日常であり文化であるという話に作り変えよう! って思ってからはみるみるうちに設定が膨らんできましたね。

 私には信仰という熱い気持ちはわからないけど、日常のひとつとして神に祈る所作も言い換えればそれは「信仰」なのでは……? という、拡大解釈です。なので、先に出来ていた第一章をもう少し掘り下げる意味合いで第二章を書いた気がします。

ついでに言うと、そのときMr.Childrenの「IT’S A WONDERFUL WORLD」という名盤にも再度ドハマりしていたので、もはや第二章は名曲「Youthful days」の歌詞を土台にして組み上げたといっても過言ではありません。誰か気付いてくれたら嬉しいな~とか、思ってたけれど感想でも講評でもそこに触れる人が誰一人いなくてしょんぼりでした。笑


 つまるところ、このお話の中に潜む「信仰」とは、神様に飼われている人間たちの心の拠り所です。もはや日常生活の一部に溶け込んだ文化的なものです。上の世界でも下の世界でもたくましく人間は生きています。別にディストピアとユートピアを書きたかったわけではないのです。それでいえば、上の世界も恋愛のできないディストピアですしね。

 毎年、とんでもない人数の自殺者を出している我が国も真っ黒なディストピアなのか? と、問われれば必ずしもそうとは言い切れないように、その環境しか知らない人間がなんとかしてその環境に馴染もうとたくましく生きているだけなのですから。

 だから、下の世界を絶望一色で書かなかったのです。ミスチルの名盤もたぶん同じようなこと歌ってますし!

 これが、私の「信仰」に対する今作の考えかたです。


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