第8話

カナタを乗せたトラックは、シャングリラから東へと走っていた



「なぁ?カナタ?」



「ん~?」



「眼をつけられてるって言ってたよな?」



「心配か?安心しろ、殺してないし、波動も残してねぇから」



窓の外を見ていたカナタが、クスッと笑って言った



「そう言う意味じゃないさ、お前と仲良かったヤツも居たんじゃないのか?子供の頃からの友達とかさ」



「何が言いたい、俺に友達なんてもんは初めから居ない」



「お前はそうでも相手は違うだろ、テレパシーくらい送って別れくらい言って「余計なことだ、思念(テレパシー)を送って、もし連中に感付かれたら?残してきたヤツが意味のない危険を背負う」



カナタは男の言葉を遮り言った



「優しいな」



「優しくないさ、この世界に優しいモノがあるなら、人類は生存していない」



男は、チラッとカナタを見て



「そうだな」



と、小さく呟いた



翌朝、カナタの居なくなったシャングリラでは、軍の入隊式が行われていた。



「まかれた?」



「ああ、長官、あのカナタ・レスと言うガキ、素性や出生経路は知ってるのか?素人のしかもガキが、手練れの軍人を波動も残さず転送移動で消えた」



「レイズ、カナタ・レスがスパイだと言いたいのか?カナタ・レスは戦争で親を亡くしてる、シャングリラの生まれだ、シャングリラでも有名な学園を今年首席で卒業してるしな」



長官と呼ばれた男は、資料をレイズに差し出して言った。



「首席で?すげぇなぁ」



レイズは渡された資料を捲り



「頭が良いと、考え方も普通じゃねぇよ長官、カナタ・レスは多分反乱分子になったと思って良い、シャングリラだけじゃなく、この世界中のな」



レイズは確信めいたように言うと、資料を机に置き



「カナタ・レスを探しだす。」



と言って、部屋を出て行った




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