第二部 Cold Heart

―序― 影

第0話 心の影

「だからカイサは友達が出来ないんだよ」


昔、死狼餌になる前――。

死狼餌になる少女達を育成する施設で吐き捨てられたように言われた言葉を思い出す。


「行こう。こいつと一緒にいても嫌な気分にしかならないよ」

「とっとと死狼に食べられちゃえば?」

「ちょっと施設職員の男受けがいいからって調子乗んな」

「まあせいぜい背中に気をつけて。いつか絶対誰かに刺されるから」

いつのまにか、気づいたらそうなっていた。私は気づいたら、みんなに嫌われていた。


私は友達が出来ない――。


それが私の当たり前だった。そしてなぜ嫌われたのかも、私は気づいていた。

多分、〝私達〟は気づいていた。

私達は心の闇に潜む〝彼ら〟のことを知っていた。知っていて、見て見ぬふりして、無視して、彼らに自分の心を好き勝手させた。

彼らの意志で動き、彼らの言葉を吐き、彼らの表情で人を嘲り、睥睨した。

私達――〝人〟は気づいていた。










ずっと、ずっと、遠い昔から〝影〟の存在に気づいていた。










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