第67話 自称錬金王vs奴隷王①
『おめでとう。
ドットも遂に覚醒者の仲間入りだね』
ディアナ・ムーサを闇の中へと葬ったことにより全てのイザナクエストは達成された。
俺の【イザナ因子】のLvが上がる条件はイザナクエストをクリアすることだ。
そして【イザナ因子】がLv10に到達すると覚醒者へと進化する。
ステータスを確認してみようとしたところ、急接近してくる何者かの気配を感知した。
『マスター。奴隷王がそちらへ向かっています』
逃げることも可能だったが、身体を乗っ取られた部下の身を案じて駆けつけて来たのだろう。
事情を話してやることぐらい手間のうちには入らない。
俺は部屋のドアが開かれるのを黙って見ていた。
▽
「モニカをどうした!
彼女の気配が消えた部屋にいるお前は何者だ!」
奴隷王は相当おかんむりのようで今にも飛び掛かってきそうな勢いだ。
「俺はしがない錬金術師だよ。
とある人物を追ってここまで来た。
そいつはモニカ・レマーの身体を乗っ取った奴でもある。
彼女のことは諦めるしかない。
奴に【憑依】されると魂が上書きされて元に戻ることはない」
と、いきなり現れたやつに言われても納得するのは難しいだろう。
「モニカを引き渡してもらおうか」
まったく聞く耳を持ってくれない。
「別に信じてもらわなくても構わないがそれはできない。
モニカ・レマーの中にいる奴は殺すことができないのである場所に封じた。
奴を解き放てばまた被害者がでるぞ?」
「そうはならない。
モニカは私が救い出す」
「もしかして賢者の石でどうにかできると思っていないか?」
「その通りだ。
あれの在庫はまだまだあるんだ。
試す価値はあるだろう」
「無理だね。
お前が持っているのは賢者の石の失敗作だよ。
本物の賢者の石であれば方法がないわけではないけど」
俺は手元で賢者の石を錬成して話を続ける。
「その赤い宝石はまさか……」
「モニカ・レマーは亡くなって既に転生を果たしている。
これを使えば彼女の魂を呼び戻すことも可能だが、
それは生まれ変わった彼女を殺すことと同義だ」
「……。
それでも死なない肉体に戻ることができるのだ。
モニカにとってもその方が幸せだろう。
だから、その賢者の石は力ずくにでも渡してもらう!」
「そうか……、それでは仕方ないな。
ここでは宿屋に迷惑がかかる。
場所を変えようか」
【万能細胞】で構成される俺の身体も不老不死だ。
奴隷王の言うように永遠に生きることは果たして幸せなことなのだろうか。
これは何度も自分自身に問いかけてきた命題でもある。
愛する家族や親しい友人が逝くのを、俺はこれから幾度も見送ってゆく。
人とは慣れる生き物だ。
いつか誰が死のうと何も感じなくなる時がくるかもしれない。
そう考えるのは早計だとこれまで言い聞かせてきた。
そうしなければ怖くて夜も眠れなかったのだ。
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