第64話 管理者④
「世界と一つになっていただって!?」
制約の錬金術師こと猶本凛は四季の前から消失した後のことを語りだした。
「私自身がネテスハイムの一部となって、
魔素を供給し続けるだけの機械になる。
それしかこの世界を救う方法はなかった」
彼女の精神と身体はこの時に二つに分かれる。
身体はネテスハイムと同化し、精神だけの存在となった彼女はその身を維持するためスキルとなることにした。
「そのまま消滅する考えは始めからなかった。
四季に再開すると約束してしまったからね。
だから私の身体を再生できる錬金術師を探す必要があった。
しかも古龍の血液を使わずに賢者の石を生成できる者をね」
しかしそんな人物が容易に見つかるわけがない。
「私は冒険者ギルドのシステムの一部となって待つことにした。
ギルドカードを作成する魔導具を創り、
そのデータベースの中にスキル【Q&A】となって潜んだ。
この魔導具はPCとプリンターだと思ってくれればいい」
そして待てど暮らせど目的の錬金術師を捜し出すことができなかった彼女は決断する。
日本からその人物を召喚すると。
「それが俺というわけか……」
どうりでQちゃんとあの時の声が似ているわけだ。
「ちょっと待って!?
ドットを召喚したのは君なのは理解した。
俺はどうしてこの世界に転生したんだ!?」
「すまない。私はその件には関与していない」
腑に落ちないといった様子のクリスの言葉をリンはすっ惚ける。
クリスは前世での死に際の時のことを覚えていない。
わざわざ仕事中に過労死したと伝える必要もないだろう。
ドットの同級生となるタイミングで転生させただけとは言えない。
「四季と別れた後のことはこんなところかな」
「今までそれを俺に黙っていたのはなぜ?
もし賢者の石を生成した時点で話していたら、
とっくに復活できていたのでは?」
「話せなかったんだ。
私の二つ名は制約の錬金術師。
【制約】の効果は自らに制限を課すことによってスキルを強化する。
君に私の正体を明かさないと【制約】することで、
スキル【Q&A】を依り代に自身を保全することに成功したんだ」
制約の錬金術師は所々嘘を交えながらそう締めくくった。
▽
「何だお前ら!?ん?あのガキがいない!?」
彼女が話し終わった直後現れた少年は古龍が見当たらずに困惑している。
「あら辻君じゃない」
「お前まだ起きてたのか」
「は!?神崎が若返った!?
それに猶本までいるじゃねーか!?
古龍のガキをどこへやった!?」
辻は抜刀し構えた。
「古龍ならここにいるだろ。
ユラン、ついでにヒムロも龍化して姿を見せてやって」
「はい、マスター」
「なぜ俺様まで」
二人は魔力を開放し龍となって宙空から辻を見下ろした。
「古龍が二匹も……」
「魔球!」
呆然と立ち尽くしている辻を魔球で捕縛し収納する。
「三人目捕獲!
いっそのことこいつら始末してしまうか。
どうせ何の罪もない人を既に殺してるだろうしな」
「何を言っているの!?ドットさん!?」
「彼らはスキルとこの世界での記憶を削除して日本へ帰す」
四季に反対されるのはともかくとして、Q……リンまでそんな甘いことを言うとは思わなかった。
「本気かリン。
記憶を消しても犯した罪は消えないんだぞ?」
「彼らも被害者なんだよドット」
彼らは四季が異世界へ転移させられたついでに送られてきたにすぎない。
それは彼女がスキルという異物を日本で所持していたから。
そしてそれを授けたのはドットなのである。
「それでは次のイザナクエストについての話をしようか」
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