第61話 管理者①
【氷室】から表へ出ると、砂埃は舞っているがいるが明るい建物内にいた。
ヒムロは龍の姿のままどこかの建物に突っ込んだらしい。
採光のために一面色とりどりのステンドグラスで装飾されていることからここは教会だと思われる。
近くにいた人たちはいきなり現れた巨大な魔物に混乱して逃げ惑っていたが、それが龍であることに気づくと途端に膝を折って祈り始めた。
ユラン聖教の御神体は古龍なのである。
「ここはユラン聖教の大聖堂ね。
この奥に宮殿があってそこに人化した古龍がいるはずよ。
わたしが案内するわ」
どうやら四季はここへ来たことがあるようだ。
「他国の重要施設を破壊とかまずくないか……」
「ドットはまだ好いほうだろ……。
俺なんて同じ姿かたちの人化したヒムロがなんか拝まれているんだけど……」
兎にも角にも俺たちは四季の後を追って奥へと進んで行くのだった。
▽
「おかしい……。
以前来た時には神官が大勢いたのに」
宮殿入り口にはヒムロが殺してしまったが僅かばかりの衛兵はいた。
しかしこれまで衛兵どころか神官の姿さえ見ていない。
結局、一度も誰何されることもなく教皇の間に着いてしまった。
「玉座の背後に飾られている宗教画が亜空間への入り口になっているの」
四季はそう言って絵の中へと入って行く。
彼女の後を追うように亜空間内へ入ると随分と殺風景な部屋が広がっていた。
そこにあるものといえば木製の椅子がたった一つ。
教皇の間に据えられていた豪華な玉座とは対照的にいかにも普通の椅子である。
「龍人といっても角とか尻尾は生えてないんだな」
「この少年が本当に古龍なのか?」
俺とクリスが近づいて観察しているが、少年は何の反応も示さずに視線は宙に固定されたままだ。
「前に見た時からまったく変わっていないわ」
「中身が空っぽではそれも致し方ないだろうな。
我ら龍種の成長は人のそれとは異なる。
不完全な復活をしたための弊害だろう」
ヒムロは憐れむように同胞の姿を見下ろしている。
『Qちゃん、イザナクエストがクリアできないようだけど?』
『魂が損傷しているためかと思われます。
人格が完全に失われているので治すのは不可能ですね』
どうやら創り直さなければならないらしい。
「それじゃあ、ちゃっちゃと古龍を復活させますか」
この少年をベースに俺の魔力マシマシの魔球と賢者の石を使用する。
「どうせまた女体化するんだろうな」
クリスの戯言を無視して魔力を練り上げる。
「錬成!」
少年を包み込んでいた閃光が収まると、さっきまで少年だった者が俺の前で膝をついていた。
金髪碧眼だった少年は黒髪に緋色の瞳を持つ成人女性へと変貌を遂げていた。
元の面影が全くない。
「ほらみたことか!
お前わざと女にしているだろ!」
「ちげーよ!」
『イザナクエスト/神の寝床を達成し、新たなクエストを受注しました』
イザナクエスト⑥/降臨の儀
報酬/10000SP
概要/ネテスハイムの現管理者を
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます